初期型(A型)から地域型(B型)へ
今回、研究者たちがウイルスの調査に使った方法は、人類の起源などを探るためなどに使われている「系統発生的」(進化的)手法と呼ばれるものでした。
この手法を取ったのは、世界各地のウイルスの遺伝子を解析して、ウイルスがどのように変異・拡散しているのかを明らかにしたかったからです。
研究チームは、最初にヒトに感染したウイルス群が、中国の武漢で入院している患者に存在していたことを突き止め、このグループに「A型」と名付けました。
「A型」は初期の幅広い感染拡大に寄与しているらしく、武漢の中国人の他に、アメリカ人とオーストラリア人にも確認されました。
しかし意外なことに、中国でもっとも多く広がっているウイルスは「A型」そのものではなく、「A型」から変異した「B型」でした。
これは人類が知らない間に、ウイルスが初期型(A型)を使った第一波の拡散を終え、地域型(B型)を使って第二波の感染拡大を起こしていたことを意味します。
また興味深いことに、地域型である「B型」は、どうやら東アジア人を主なターゲットにしていたという事実です。
地域型(B型)からは初期型(A型)が持っていた幅広い感染能力が失われており、欧米人などに対しては効果的な感染ができなくなっていました。
ウイルスは特定地域を攻略するために、総合力よりも地域的な適応能力を選んだのでした。
そして、周知のように、その戦略は絶大な「効果」をもたらしました。
地域型(B型)は中国で大流行を起こし、続く変異に対応する十分な母数の獲得に成功したのです。
日本に持ち込まれたウイルスも、この地域型の「B型」がメインとなっています。