ジェームズ・リンドの肖像
ジェームズ・リンドの肖像 / Credit:Wikipedia Commons
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「根拠のある科学的医療」はいつ登場したのか?

2020.04.24 Friday

新型コロナウイルスの流行を機に、これまで何気なく受けていた医療の根拠について考える人は増えたかもしれません。

ワクチン関連では科学的でない情報を広める人たちも目立つようになりましたが、これは多くの人々が医学の根拠となる情報の見方を理解できていないことを示しています。

現代の医療は全て科学的根拠に基づいて成り立っています。しかし、そもそも「科学的根拠」とは何を指している言葉なのでしょうか?

実は根拠に基づいた医療が実施されるようになったのは、かなり最近のことです。それまでは医者さえも、効果的な医療をどうやって判断すればいいのかわかっていませんでした。

医療の重要さを身にしみて感じる昨今、「科学的根拠」のある現代医療がどのようにして成立していったのか、歴史を振り返ってみましょう。

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↓↓動画でも解説しています。

ちょっと前までの医療は科学的根拠がなかった!?

科学的根拠に基づいて安全な医療が行われるようになったのは、実はわりと最近のことです。

ほんの数百年前まで医療の主役は瀉血(しゃけつ)でした。

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中性ヨーロッパの瀉血の様子。/Wikipedia Commons

瀉血というのは、リストカットして悪い血を抜き取るという治療法で、これであらゆる病気が改善すると本気で信じられていました。

中世ヨーロッパ時代、この瀉血という医療を行うのは修道士でしたが、血なまぐさい処置を修道士が行うことを教皇が禁じたため、後の時代では床屋が担うようになります。

理髪店には赤青白の縞模様がくるくる回転する看板がありますが、あれは青が静脈、赤が動脈、白が包帯を表していて、これはかつて床屋が瀉血医療を行っていたことの名残なのです。

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Credit:depositphotos 

床屋では、カミソリでひげを剃るついでに、体調の良くない人の手首を切って悪い血を抜いてあげていたわけです。

瀉血は現代人にとっては冗談みたいな医療ですが、この治療方法は当時、大きな病院や大学でも当たり前に教えられている立派な医療行為でした。

例えばアメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンは、晩年風邪で体調を崩した際、主治医に瀉血を行ってもらい、1日で身体の半分の血液を失いました。彼の死因は、瀉血のやりすぎによる失血死だったと言われています。

当時の医師たちが、患者の命を危険に晒すだけのこんな馬鹿馬鹿しい行為をまともな医療と信じていたのは、その治療が本当に効果的かどうか、判断する方法を持っていなかったためです。

つまり、まだこのときの医学は「科学的」ではなかったのです。

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