未知の風邪コロナがワクチンになっていた可能性
また、東大の研究以外にも、風邪コロナウイルスによって新型コロナウイルスに対する免疫付与が行われたとする研究が存在します。
中国の武漢大学によって行われた研究では、新型コロナウイルスに感染した経歴のない人間の34%に、新型コロナウイルスを認識する抗体の生産能力があることがわかりました。
この抗体は、新型コロナウイルスが発生するより前の2015年から2018年に得られた血液サンプルにも存在しており、この抗体が新型コロナウイルス以外のウイルス(おそらく風邪コロナウイルス)によってもたらされた可能性を示唆しています。
このころから中国の研究者は、既存の風邪コロナウイルスによって新型コロナウイルスに対する免疫力が人間に付加されたと主張していました。
日本と中国の結論は多くの点で一致しており「断続的に発生する弱毒化したSARS(日本の説)」または「古くからの風邪コロナウイルス(中国の説)」といった他のコロナウイルスからの感染が、新型コロナウイルスに対する、一種のワクチンとなったとしています。
この事実は、風土病に対する一般的な認識と同様です。
すなわち、感染症の発生地域の人間・動物・植物には、何らかの耐性があるのに対して、遠く離れた地域の生物には免疫がないとするものです。
かつてのペストのように、元々はアジアの病気であったものがヨーロッパやアメリカに広ると、被害がより大きくなる傾向があります。
国の検疫対応、変異したウイルスの型、そして今回明らかになった他のコロナウイルスによる事前の免疫学習。
新型コロナウイルスの流行の原因は様々であり、現状ではどれが決定的な原因かはわかりません。しかしウイルスの情報が増えれば増えるほど、解決への道も開けていくでしょう。
研究内容は東京大学 先端科学技術研究センター の川村猛氏らによってまとめられ、5月15日にZOOMウェビナーで先行発表された後に、世界五大医学雑誌の一つである「The Lancet」に投稿済みです。
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/release/20200515.html