AIや電子工学の急速な発展とは裏腹に、いまだSF作品に出てくるようなサイボーグ技術は実現していません。
マシーンを生身の肉体につなぎ合わせるのは、非常に難度の高い技術だからです。
しかし現在、香港科技大学とウィスコンシン大学マディソン校の共同研究により、人工眼球「EC-EYE(ElectroChemical EYE)」の開発が進められています。
ヒトの目を忠実に模倣しており、ホンモノをしのぐ鮮明な視力を実現できるかもしれません。
EC-EYEは現時点でどこまで完成に近づいているのでしょうか。
ホンモノの眼球を忠実に再現
ヒトの目の視力や広い視野は、眼球の奥にある「網膜」というドーム型の器官に支えられています。網膜は、視覚的な光情報を検出する細胞に覆われており、その情報を神経信号に変換して、脳に伝達する重要な場所です。
研究チームは、網膜を再現するため、光への感度が高い材料を用いたナノサイズのセンサーを開発。それをドーム型に湾曲させた酸化アルミニウム膜に散りばめることで、人工網膜を作成しました。
下図の赤い部分に見られる点々がナノセンサーです。
球状の人工網膜はシリコン製のソケットに固定され、虹彩を模したレンズが前面に設置されます。EC-EYEの直径は約2センチです。
眼球内部には、硝子体(レンズと網膜の間のジェル)の代替えとして、イオン液体を充填します。これにより、ナノセンサーを電気化学的に機能させられます。
人工網膜は、光への感度が高く、反応時間はヒトの目を越えます(ヒトの目が約40〜150ミリ秒の反応時間を要するのに対し、ナノセンサーは30〜40ミリ秒以内)。
しかし、視野についてはヒトの目(150〜160度)に劣っており、最大で100度が限界のようです。