細胞と型枠を組み合わせて培養し、ラットに移植する
材料となる細胞と、型枠となる細胞抜きの肝臓が用意されると、次に研究者は両者を組み合わせます。
方法としては人工臓器作成では一般的な3D印刷技術が使われ、型枠の内部に胆管、血管、肝臓の細胞が立体的に組み合わせることで培養を可能にしました。
通常、人間の肝臓の機能成熟には2年ほどかかりますが、興味深いことに人工の肝臓は1カ月ほどで大人の肝臓と同じ機能を持ち始めたそうです。
人工肝臓の培養が終わると、研究者たちは拒絶反応を抑制されたラットに移植を行い、生体内での機能を調べました。
その結果、移植されたヒトの遺伝子を持つ人工肝臓は、ラットの体内にあってもヒト型の胆汁を分泌し、肝臓の機能である尿素生産も正常に行っていることが明らかになりました。
複雑な構造の臓器を、たった1個の皮膚細胞から完璧に生産する今回の研究結果は、ドナー不足に陥っている臓器移植の未来を明るくしてくれそうです。
研究内容はアメリカ、ピッツバーグ大学の武石一樹氏らによってまとめられ、6月2日に学術雑誌「Cell Reports」に掲載されました。
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(20)30688-4