中国・河南省にある「霊井(Lingjing)遺跡」で見つかった小鳥の彫像が、東アジア圏で最古の彫刻芸術であることが判明しました。
小鳥像は、焼いた動物の骨から作られており、大きさは2センチもありません。
中国、フランス、日本、アメリカの研究機関が参加した調査により、約1万3400〜1万3200年前に作られたものと特定され、これまで東アジアで出土した最古の彫刻芸術を8500年以上も更新する結果となりました。
これは東アジアの彫刻の歴史が、定住と農耕を始めた「新石器時代」から、狩猟採集で暮らしていた「旧石器時代」にまで遡ることを意味します。
洗練された彫刻スキルが使われていた
この彫刻像では、小鳥が台の上に立つ様子が表現されています。
翼はないものの、全体の輪郭や目とクチバシの跡が見られることから、スズメ目の鳥を参考にしていると思われます。
こうした「止まり木の鳥」というモチーフは、新石器時代から古代中国において主流の芸術テーマとなっていました。新石器時代は、人類の定住が落ち着き、次第に余暇の時間を持ち始めた頃です。
ところが、今回の発見により、小鳥のモチーフや彫刻技術が、それ以前から始まっていたことが示唆されています。
また、驚くべき保存状態の良さから、製作プロセスを詳細に調べることができました。
小鳥像は、哺乳動物の四肢骨を材料とし、表面の色の濃淡から、骨を整形したり、縮めたりするための加熱技法が用いられたことが分かっています。
CTスキャンにより6つのアングルから調べて見ると、各面で彫り込みや研磨、削り落としなどが細かく使い分けられていました(下図)。
これまで東アジア圏で知られる最古の彫刻像は、同じく中国で見つかったBC5000年頃のヒスイの小鳥像です。
しかし、今回の小鳥像は、それとは違って非常に独創的であり、人類の彫刻技術が予想よりずっと昔に起源を持つことを証明します。
こうした芸術的伝統は、旧石器時代から脈々と受け継がれてきたと思われ、それを深く理解するには同時代の他の作品も調べる必要があるでしょう。
それでも、この小鳥像を見るだけで、当時の古代中国に豊かな創作の歴史があったことが伺えます。
研究の詳細は、6月10日付けで「PLOS One」に掲載されました。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0233370
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