- コア-マントル境界に既存のデータよりも広範囲に高密度で高温の岩石構造が発見された
- 新たな研究は、数千の地震波から境界のエコーを特定することに成功し、この事実を明らかにした
- 新たな地中の構造を知ることで、プレートテクトニクスや地球進化の手がかりが得られるかも知れない
地球のコアに関する研究は、これまでもたびたび話題になっていますが、3000km以上地下にある、コア-マントル境界の様子を詳しく知ることは至難の技です。
人類は今でもだいたい12km程度までしか地面を掘る技術は持っていません。
そのため、地球深部を調査する研究では、地震で発生した音波(地震波)が地中を伝わるエコーを記録して分析するという方法を使っています。
これまでの研究は、一度に数個のエコーを見て調査を行っていましたが、新たな研究は数千のエコーを一度に見ることで、まったく新しい視点で地球深部の様子を探ることができると報告しています。
そして、研究者はこの方法により、今まで明らかになっていなかったコア-マントル境界の詳しい構造を明らかにしたのです。
一体地球深部に何が見つかったのでしょうか?
地震波エコーで地球深部を探る
地球深部の構造を探る場合、穴を掘って覗くわけには行きません。
地質学者は内科医が外側からの診断だけで体内の様子を知るように、外側から得られる情報だけで、何があり、何が起こっているかを推測します。
この際利用されるのが地震です。地震は地中に地震波を発生させ、何千キロメートルもの距離を伝わっていきます。
地震波は、密度や温度、組成の変化したポイントにぶつかると、速度を変えたり、屈折したり、散乱したりして多くのエコーを発生させます。
体内の診察でも超音波エコーを用いることがありますが、それと似たような原理を、地震を使って行うのです。
そして、地球の各所に観測所を設け、このエコーを検出していきます。何らかの構造に近い観測所では、エコーは他の地域より速く検出されます。
また、構造が大きければその分検出されるエコーも大きいものになります。
こうして科学者は、あちこちの観測所で記録されたエコーの移動時間や振幅を解析して、はるか地中深くに隠された岩石の物理的性質をモデル化するのです。
研究者たちが注目したのは、せん断波と呼ばれる種類の波です。これは進行方向に対して垂直に揺れる波のことで、つまり横波(S波)のことです。
このS波がコア-マントル境界に沿って移動したとき発生するエコーを、この研究では探したのです。
しかし、ただ単純にエコーを探したわけではありません。彼らは通常数個のエコーしか調べないこの調査で、一度に数千のエコーを調べたのです。