大地の摩擦エネルギーと山脈の高さ
熱流はプレート界面に発生する摩擦エネルギーに関係しています。
シーツの下に腕を突っ込んで動かすと、生地にシワがよって盛り上がった折り目などができますね。
山はそのように、地下で動く地殻の影響から生まれています。
このとき、経験のある人ならすぐわかるでしょうが、生地と接する肌は擦れてちょっと熱くなります。これは摩擦熱が発生しているためです。
地殻でも同様の事が起こります。大地と擦れて動くプレートでは、境界に摩擦エネルギーが発生し熱流に影響するのです。
いわば、熱流測定はプレート境界における力の活発さを示す指標になるのです。
こうして、さまざまな地域でプレート境界にかかる力を計算し、そこに形成されている山脈の高さと比較してプロットしてみた結果、なんと2つの値は綺麗に比例したグラフになったのです。
研究者たちは、高さの異なる山脈(ヒマラヤ、アンデス、スマトラ、日本)の地下の摩擦に関する文献や、データを収集し、その結果生じる応力と、山の隆起につながる力を計算しました。
そして、プレート境界にかかる力と、山の重さや高さに起因する力が調和していることが示されたのです。
これは、侵食速度が大きく異る気候帯でも同様の結果が示されています。
つまり侵食の影響よりも、プレート境界でどの程度力がかかっているかという要因の方が、山の高さ決定に大きく影響していたのです。
これは長期的な山の成長を研究していく上で、重要な発見となるものです。
これだけ綺麗な結果が出ると、研究者もさぞ爽快だったことでしょう。
この研究は、GFZドイツ地球科学研究センターのArmin Dielforder氏が率いる研究チームより発表され、論文は6月11日付けで科学雑誌『nature』に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2340-7
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