地中の「菌」が伝導体になっていた
今回は、トマトの生体電位や土壌環境など、実際のデータを細かく取り入れてシミュレートしています。
最初の実験で、トマトの根っこ同士を別の土壌に隔離してみたところ、トマト間のインピーダンスが大きくなり、電気信号が伝わりませんでした。インピーダンスとは、交流回路において電流の流れを妨げるもので、「電気の流れにくさ」くらいに理解すれば良いでしょう。
しかし別の実験で、トマトを同じ土壌中に置いてみると、インピーダンスがぐっと小さくなり、根っこが電気信号を送り合っていました。
その際に電気信号の媒介をしていたのが、地中にあまねく存在する「菌根菌(Mycorrhizal fungi)」でした。
菌根菌は、植物と共生する菌類であり、地中に張り巡らした菌糸を植物の根っこにくっつけて菌根を作ります。この菌根菌が、いわゆる電子回路の働きをして、電気信号が交換されていたのです。
シュテッセル氏は「植物が地中の菌根菌ネットワークを介して、同種だけでなく異種間でのコミュニケーションをしている可能性もありうるでしょう」と指摘しています。
それでも、やり取りされるメッセージがどんな内容なのかは分かりませんし、植物が受け取った電気信号を正しく認知しているのかどうかもまだ憶測の範囲です。
それから両氏は、「地中でなく空気中を介した電気信号のやり取りは可能かどうか」という点にも興味を持っており、研究を続けていくとのことです。
トマトたちは、電気信号を交換して、お互いの健康チェックでもしているのでしょうか。
研究の詳細は、4月28日付けで「Communicative & Integrative Biology」に掲載されています。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/19420889.2020.1757207?scroll=top&needAccess=true
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