同じ森にはズグロモリモズの外見を真似する鳥がいる
しかし疑問は残ります。
ズグロモリモズはなぜ猛毒のエサを食べても平気なのでしょうか?
バトラコトキシンは特にズグロモリモズの羽と皮膚に濃く存在するものの、骨格筋や心臓といった組織にも存在が確認されています。
通常の鳥類であれば、明らかな異常が発生するはずです。
その答えは、遺伝子にありました。
近年の遺伝的分析により、ズグロモリモズは自身の遺伝子2か所とミトコンドリア遺伝子3カ所を変化させることで、毒に対する耐性を得ていたことが示唆されたのです。
ですが毒を用いた圧倒的に有利な生存戦略は、すぐに他の動物に利用されてしまいます。
ズグロモリモズが生息する森に、まったく別種の鳥でいながら、ズグロモリモズにソックリな外見と色合いをした鳥があらわれはじめたからです。
このコピー鳥は、毒のあるズグロモリモズに外見を似せることで、自分も毒があると見せかけ、捕食から免れることに成功していました。
こうなっては、捕食者に対する学習効果はダダ下がりになり、毒耐性の元祖であるズグロモリモズにとっては損ばかりとなります。
しかし本物の毒だけが持つ利点もあります。
ズグロモリモズの羽に含まれる強力な神経毒は、ノミやダニといった羽に寄生する虫に対して効果があり、ズグロモリモズは他の鳥とは違って寄生虫からの被害を受けにくいのです。
ズグロモリモズがコピー戦略に負けて毒を失わないのも、こうした地味ながら確実な差となる効果があるからかもしれません。
やはり偽物は本物には敵わないということでしょうか。
この研究はアメリカの科学学術雑誌「scinence」に掲載されました。
https://science.sciencemag.org/content/258/5083/799
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