ハチの巣の完成予想図はなかった「結晶生成に近い」
では、なぜこのような芸術的な巣を建てられるのでしょうか。
研究主任のジュリアン・カートライト氏は、コンピューターシミュレーションを用いて、ハチの巣の生成過程をモデル化しました。
シミュレーションの結果、働きバチは、ある行動ルールに従って小部屋を並べていくことが判明しています。
まず絶対のルールとして、働きバチが各部屋を新設できるのは、増設中の巣の先端のみです。つまり、他のハチが付け加えていった部屋の隣にしか増設できません。
しかも、ハチたちは、新設する部屋を隣のものより少し高い位置に付け加えていました。このルールに沿って増設が続くと、ひと連なりで高くなる「らせん状の巣」が完成します。
一方で、各層の部屋が同じ高さ(水平)に建てられると、ハチは部屋の真上に次の部屋を新設しました。これが続くと「同心円の巣」になります。
またシミュレーションでは、各層の半径が大きくなるほど、完成した巣は層の数が少なくなっています。
それから、部屋を増設する際のイレギュラー性(高さや位置のアンバランス)が強くなると、綺麗ならせん状や同心円から離れ、上の(d)のような巣が出来上がりました。
カートライト氏は「この結果から、それぞれのハチは、マスタープランに従うのではなく、前もってコード化された行動ルールと目の前の状況に従っているにすぎない」と説明します。
要するに、ミツバチは、全体の構造を見るよりも、一つ前の部屋の位置だけを見て、それに合わせて自分が置く部屋の位置や高さを決めているのです。
「こうしたルールは結晶の生成プロセスに非常に近い」と同氏は話します。
しかし、巣の生成モデルは理解できても、テトラゴヌラ属が、一般的なハチの巣ではなく、なぜ同心円やらせん状の巣を作るのかは説明できません。ハチの知能には、人の理解できない領域がまだまだ存在するのでしょう。
研究の詳細は、7月22日付けで「Journal of the Royal Society Interface」に掲載されました。
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsif.2020.0187
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