ロボットや機械が「鬱」になると聞くと、奇妙に思えます。しかし、アメリカの神経科学者ザッカリー・マイネン氏によると、人工知能も人の精神医学的問題で苦しむ可能性があるそうです。さらに、もし正しく監視されなかった場合、機械は妄想さえ抱くかもしれないと言います。人間が使う抗うつ剤は、脳内で神経伝達物質として働くセロトニンの量の調節を助けるもの。もしかすると人工知能の開発者は、将来的に抗うつ剤と同等の働きをするソフトを作る必要があるかもしれません。
http://www.sciencemag.org/news/2018/04/could-artificial-intelligence-get-depressed-and-have-hallucinations
マイネン氏は元々機械知能の専門家でもあり、リスボンの“Champalimaud Center for the Unknown”にて、脳がどのように決定を下すのかを研究しています。彼はニューヨークで開かれた“Canonical Computations in Brains and Machines”会議で、この一風変わった説を発表しました。彼の主張では、セロトニンは幸福感や抑うつに関わっているのではなく、脳内のセロトニンが少なすぎる人たちは、世界の見え方を変えるのに苦労しているというのです。
「セロトニンは幸福感に関係していると思われていますが、セロトニン神経は『良い』『悪い』というメッセージを伝達するというよりも、もっと『驚き』のメッセージを伝えるために現れます。薬で鬱を治療するということは、気分を改善するというよりも、変化することを助ける意味合いが大きいです。プロザックのような選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、脳の柔軟性を円滑に出来ます。それは、変化する能力であり、轍にはまるのを避ける能力で、ヒトとアンドロイドの両方の精神衛生に不可欠です」とマイネン博士は説明します。
マイネン博士の説によると、セロトニンは、知的システムにおいて一般的な問題を解決することを助けます。今までの常識を覆し、新たな見方で物事を見るように変化させるのです。これは、引っ越して新たな環境に身をおいた時など、それまで自分の属した世界とは違う環境に適応するのに必要です。セロトニンが不足すると、同じ考えの轍にはまってしまい、鬱になります。逆に、セロトニンが増えすぎると、多くの新しい情報を処理しようとするために、妄想を感じることになります。
人工知能の能力が上がり、真の自立性を得ると、どれくらいの割合で学習するのかを自身で決める必要がでてきます。そこで、人工知能はセロトニンの代わりとなるようなシステムを発達させることで、それを解決します。しかし、そのシステムを持つことで、ヒトがセロトニンが原因でかかる精神的な障害を人工知能も持つことになってしまうのです。
ロボットが妄想を抱いたり、鬱になると聞くとSFの話のようですが、この理論はヒトの神経学的な過程を土台としています。「自律的なAIにはそれ自身の興味と目標が必要となるでしょう。もし、それらが阻まれたとすれば、ヒトや動物がそれに対して反応するのと同等の反応、つまり、怒ったり悲しんだりするのです」
via: Daily Mail/ translated & text by SENPAI
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