国境を超えて伝わる音楽のイメージ
この実験とは別に、研究では両親に2つのタイプの外国の楽曲を聞かせ、どちらを使って乳児を落ち着かせたいかという選択をしてもらいました。
両親はどちらが子守唄なのか知らないで選択を行いましたが、ほとんどの場合、子守唄に分類される楽曲を選びました。
これは両親も無意識のうちに、子守唄の普遍的な要素を認識していることを示します。
「騒ぐ子供を落ち着かせることは、親にとって緊急の問題です。子供を持つ人たちは、子守唄に普遍的に現れる音響的特徴を特に敏感に感じ取っているのかもしれません。なぜなら、それは子供を効率的に落ち着かせる可能性が高いからです」研究者のメール氏はそのように説明しています。
子守唄はメロディーに特徴があります。それに対してダンスソングなど他の多くのタイプの楽曲は、リズムがより特徴的になってくるといいます。
この調査結果は音楽がいかに心理的な面で効果的かを示す証拠だと、研究チームの1人ベルトロ氏は言います。
研究成果は臨床現場での音楽療法の効果を理解するためにも役立つ可能性があり、乳児のリラクゼーションを促進する効果が成人期まで続くかどうかという点も興味深い研究対象です。
今回の研究はアメリカ人が対象で行われましたが、これは異なる文化圏の人々で同じ実験を行っても同様の結果が再現される可能性があります。
チームは今後それらを検証するとともに、子守唄の特定の音響要素の何がリラクゼーションの促進に関与しているか調査を行っていく予定だと語っています。
子守唄自体にヒーリング効果があるならば、それは子供だけなくそれを歌って聞かせる親にも心理的に良い効果を発揮している可能性があります。
音楽の機能を探求するのは非常に興味深い分野です。
音楽がどこから生じて、私たちの生活の中へと浸透していったのかはとても不思議な問題でしょう。他国の音楽だとしても、私たちはそれを聞くと情緒を感じ、その曲のイメージするものが理解できたりします。
言語や文化的な背景を超えて伝わるその感覚は一体なんなのでしょうか? それは今後の研究に託される課題のようです。