なぜ「抗うつ薬」を新型コロナウイルス感染者に投与したのか?
11月17日現在、新型コロナウイルスの感染者数は全世界で5500万人に達し、130万人以上の死者が発生しています。
これ以上犠牲者を増やさないためには、今すぐ効き目のある薬が必要ですが、薬の開発には通常、年単位での時間がかかります。
そのため医師や研究者たちは僅かな望みをかけて、パンデミック発生直後から、既存の薬を実験的に患者に投与する試みを続けてきました。
現在知られている薬の少なくない数が、製品化された後に別の病気に対する効果が認められ「転用」された実績があるからです。
同じような幸運が起これば、既存の薬が新型コロナウイルスに対する特効薬になるかもしれません。
そこで今回、ワシントン大学の精神科と感染症部門の研究者たちは協力して、抗うつ薬として知られるフルボキサミン(ルボックスまたはデプロメール)をウイルス感染患者に投与することにしました。
というのも、昨年行われたマウスを用いた研究によって、フルボキサミンには敗血症として知られる致命的な免疫反応(炎症)を抑える効果が確認できていたからです。
新型コロナウイルスは、免疫系の過剰な働き(サイトカインストーム)が死因になることがあります。もしフルボキサミンが人間でも免疫を抑える効果を発揮すれば、命を救う薬になるのです。