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「体内時計」を調整する薬が開発される。時差ボケ解消への応用が期待

2018.04.19 Thursday

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Credit:ITbS
Point
・名古屋大学を含む共同研究チームが、体内時計を調整できる薬を開発
・その薬の中から、マウスの時差ボケを解消する薬も発見
・ヒトの時差ボケ解消にも効果があるかの検証が課題

体内時計を自分で自由に調整することができる未来が来るかもしれません。

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)や近畿大学医学部などの共同研究で、ヒトの細胞に存在する体内時計を早く動かしたり、遅く動かしたりできる薬を既存の薬の中から発見することに成功しました。また、その薬の1つをマウスに与えると、時差ボケを軽減できることもわかりました。

体内時計は身体のほぼ全ての細胞に存在します。それらの体内時計を動かしているのが「時計遺伝子」と、それから作られる「時計タンパク質」です。身体が細胞が持っている時計を「子時計」とすると、すべての体内時計を統括しているのが、脳の視床下部にある「親時計」です。親時計と子時計は常に連絡をとり、身体の中の体内時計を合わせようと働いています。

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今回の実験では、ヒトの培養細胞に既存の薬、約1000個をそれぞれ加えて体内時計に影響を与えるものを調査しました。その結果、46個の薬が体内時計を遅くし、13個の薬が早くすることを発見しました。これらの薬には、抗がん剤やホルモン剤、ビタミン剤など様々な薬が含まれていました。

このことから研究チームは、体内時計を薬で調整することで時差ボケを軽減できると考えました。時差ボケは、日本からアメリカに行くときのように、東向きに移動して体内時間を早めさせるときに症状が重くなります。よって、研究者らは体内時計を早める薬である「DHEA」に着目しました。

DHEAは、日本で医薬品に指定されており、海外では若返りの薬や代謝を促すサプリメントとして販売されています。

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研究チームは、このDHEAをマウスのエサに混ぜて食べさせたところ、マウスの回し車での活動リズムが早回しされていることを発見しました。また、マウスを6時間の時差が生じるように部屋の明暗周期を変化させました。すると、DHEAを摂取していないマウスが時差解消に一週間程度かかっているのに対し、摂取したマウスは2、3で解消しました。

実験結果から、DHEAは親時計よりも子時計に働いていると推測されました。時差ボケでは、親と子時計の両方を調整する必要があるので、親時計を調整する薬の発見が期待されます。また研究チームは、マウスの時差ボケに効果があったDHEAがヒトにも効果があるか解明することが今後の課題と述べています。

最近、「夜型は早死にするリスクがあり、朝型になおそうとしてもどの道早死にする」という理不尽なニュースがありました。時差ボケも困り者ですが、簡単に夜型を朝型にできる薬が出て欲しいものです。

via: ITbM / text by ヨッシー

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