弱点は最大の武器!「イクチオステガ」の大偉業とは?
ノロマな肉鰭類は、広大な海や流れの強い川で生きるには完全に不向きでした。
その中で、水草をかきわけながらしか生きられないような浅瀬に追いやられたのです。
メインストリームの条鰭類に比べたら、明らかに「海の落ちこぼれ」でした。
水の中をスイスイ泳ぐ魚たちを見て、くやしい思いをしたかもしれません。
ところが、彼らなりに肉厚のヒレを一生懸命動かしているうち、ヒレを手足のように使える子孫が誕生しました。
「イクチオステガ」です。
イクチオステガは、約3億6700万年前に出現し、4つのヒレは大地を踏みしめる手足の形にぐっと近づいていました。
そして、ついにイクチオステガは海に別れを告げ、陸上にその一歩を踏み出したのです。
水中では落ちこぼれだった魚が、「陸上生物の先駆者」になった瞬間でした。
イクチオステガの大革命から、爬虫類が生まれ、恐竜が生まれ、鳥類や哺乳類が生まれ、そしてヒトへと進化の枝葉を広げていきます。
あらゆる陸上生物は(昆虫をのぞいて)、イクチオステガのおかげで誕生したのです。
偉大な進化の主役は、メインストリームではなく、「落ちこぼれ」とされる集団から生まれます。
本流にいる生き物は何も変える必要がないからです。
イクチオステガは、速く泳げないし、小回りもきかない海の劣等生でした。しかし、欠点だと思われたヒレは、「陸のヒーロー」になるための布石だったのです。
これは私たちにも言えることではないでしょうか?
自分の弱みは、視点を変えれば、どこかの世界の最大の武器なのかもしれませんね。
何故魚類は陸上に進出したのか。その理由は二つあって、身体の巨大化と活発な運動能力の獲得により、必要とされる酸素量が増えたからと想像します。水中からえらで摂取できる酸素量と大気中から肺で得られる酸素量とを比較すれば、後者の効率が圧倒的に高いでしょう。前記の事情は種間での生存競争に有利に働いたと推測できます。身体の巨大化と活発な運動能力は勝てる条件だったと思われます。そのためには大量の酸素を必要としました。
「イクチオステガは海に別れを告げ、陸上にその一歩を踏み出した」とありますが、川ではありませんか。