上限解放された天の川銀河サイズのブラックホール
天の川銀河の中心には、核となる超大質量ブラックホールが存在すると考えられており、その質量は太陽の400万倍と推定されています。
さらにはるか彼方の宇宙には、クエーサーと呼ばれる天体があり、これは大きいものだと太陽の100億倍という質量を持った超大質量ブラックホールです。
このようにブラックホールは非常に巨大なものが見つかっていますが、それでもそのサイズには上限があるように見えます。
基本的に超大質量ブラックホールは、太陽質量の100万倍から100億倍をいくらか超えた範囲の中に収まっています。
しかし、ロンドン大学クイーン・メアリー校の研究チームは、このブラックホールの上限サイズを超えた、SLABs(stupendously large black holes)という途方もなく巨大なブラックホールのクラスが存在するかもしれない、と報告しています。
研究チームはこのSLABsが、銀河が宇宙に現れるよりも前の、初期宇宙で形成された原始ブラックホールであると考えています。
原始ブラックホールは通常の星の崩壊による誕生ではなく、初期宇宙の物質の密度差により領域自体が崩壊して誕生したと考えられています。
通常のメカニズムとは異なるため、原始ブラックホールは地球サイズ以下の非常に小さいものから、途方もなく巨大なものまで存在すると予想されています。
それは現在想定されているブラックホールのサイズ上限を超えて、太陽質量の1000億倍以上となり、大きさはその高密度を考慮しても天の川銀河のサイズにまで達する可能性があります。
もしそんなSLABsが存在した場合、暗黒物質をめぐる謎も解明されるかもしれません。
SLABsは、後の宇宙ではなにもない星間の暗い領域となる場所で誕生した可能性があり、宇宙の見えない重力的な影響、暗黒物質を説明する鍵になる可能性があるのです。
ただし、研究の筆頭著者であるバーナード・カー教授は「SLABsが存在する証拠があるわけではない」と、この研究について警告を述べています。