より本物に近いステーキ状の培養肉
より本物に近いステーキ状の培養肉 / Credit: 東京大学 生産技術研究所より
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リアルな噛みごたえを再現! 世界初の「培養ステーキ肉」の作製に成功(東京大学)

2021.03.03 Wednesday

リアルな肉の食感をもつ「培養ステーキ肉」が世界で初めて誕生しました。

東京大学 生産技術研究所は、ウシの筋細胞を用いて、3次元で培養することで、より本物のステーキに近い筋組織の作製に成功。

従来の培養肉は、ウシやトリの筋細胞を集めただけの、いわばミンチ肉のようなものでした。

本研究は、畜産による環境汚染や、人口増加による食肉需要の増加に応える培養肉として多いに期待されています。

研究は、3月2日付けで『Science of Food』に掲載されました。

Meeting the Meat Needs of the Future: Innovative Biofabrication of Beef Muscle Tissue in the Lab https://scitechdaily.com/meeting-the-meat-needs-of-the-future-innovative-biofabrication-of-beef-muscle-tissue-in-the-lab/ Lab-grown meat now mimics muscle fibres like those found in steak https://www.newscientist.com/article/2269671-lab-grown-meat-now-mimics-muscle-fibres-like-those-found-in-steak/
Formation of contractile 3D bovine muscle tissue for construction of millimetre-thick cultured steak https://www.nature.com/articles/s41538-021-00090-7

筋細胞を3次元で培養

私たちが普段「肉」として食べている部位は、大方が筋肉組織です。

そのため、培養肉をつくるには筋肉組織を再現する必要があります。

チームはまず、「筋芽細胞」という筋繊維の元となる未熟な細胞を培養して増やし、これを原料として使いました。

筋芽細胞を集めて成熟させると、隣り合う細胞同士が融合して、細長い筋管に変わります。

そこから成熟がもう一段進むと、「サルコメア」と呼ばれる縞状の筋線維が出来上がります。

筋芽細胞の成熟
筋芽細胞の成熟 / Credit: 東京大学 生産技術研究所より

ミンチ肉は筋繊維がランダムなので噛みごたえはありませんが、サルコメア構造をもつステーキ肉は、程よい弾力と食感が生まれます。

さらにチームは、これをサイコロ状のステーキ肉にするべく、「3次元筋組織培養」を行いました。

3次元筋組織培養は、足場を用いて筋細胞を立体状に培養する方法で、プレート上の2次元培養に比べ、より生体に近い状態に置かれるため、筋組織の成熟も早くなります。

本研究では、コラーゲンゲル(コラーゲンと水分からなる支持体)を用いた2種のモジュール(足場)を交互に積み重ね、それぞれに筋芽細胞を流し込んで、立体状に培養させました。

2種の足場を積層して3次元培養
2種の足場を積層して3次元培養 / Credit: nature

その結果、長さ1センチ、幅0.8センチ、高さ0.7センチの大型筋組織の作製に成功しています。

また、食紅で赤く染めたところ、食欲をそそるリアルなステーキ肉が再現されました。

食紅に染める前
食紅に染める前 / Credit: 東京大学 生産技術研究所より
食紅を使ってよりリアルな見た目に
食紅を使ってよりリアルな見た目に / Credit: nature

こうした培養肉は、採取された少量の細胞を何倍にも増やしてつくられるため、食肉用の家畜を減らしたり、畜産に伴うメタンガスの排出を大幅に削減できます。

加えて、人工肉の培養は、徹底的に衛生管理された無菌室で行われるため、食中毒の発生を抑え、従来の食肉より安全に食すことが可能となります。

その一方で、大量生産によるコストや技術面、あるいは、人工肉を食べることの抵抗感など、実用化にはまだまだ問題が山積みです。

果たして、人工肉が食卓の仲間入りをする日はやってくるのでしょうか。

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