短時間でも効果的な運動
運動不足はメタボリックシンドロームや糖尿病、心肺機能の低下など、さまざまな病気と関連づいています。
現在、世界保健機関(WHO)は成人が1週間あたりに、150~300分の適度な運動、または75分~100分の激しい運動を行うことを推奨しています。
しかし、多くの人は自身の運動不足とそれに伴うリスクを理解していながら、それでもなかなか運動できません。
その主な原因は、毎日運動するための十分な時間が取れないから、というのが大きいでしょう。
時間が取れないと「ちょっとやるだけじゃ疲れるだけで意味がない」と自分に言い訳して、面倒なトレーニングからは逃げてしまいがちです。
また、体力がない人が無理に激しい運動をしようとしても、辛くてやってられないという問題もあります。
無理のあるプランは結局長続きしません。
時間がない、体力がないという理由で運動不足に陥っている人たちは、これを解消することがかなり困難です。
けれど、最近の研究は、こうした人たちに希望を与える報告を行っています。
それが高強度インターバルトレーニング(HIIT)です。
HIIT(ヒット)は、短時間の高強度の運動とクールダウンを繰り返すトレーニング方法で、合計の運動時間も20分程度と短くて済むのが特徴です。
多くの研究は、この運動でも十分な効果が得られると報告しています。
そして、今回の研究は、中でも特に少量で済むHIITに焦点を絞り、過去10年間の文献を調査して、その根拠を探りました。
少量HIITとは、合計トレーニング時間が20分以内、実際の高強度の運動は15分未満でも十分な効果があるというものです。
その結果、研究者たちは代謝の改善はミトコンドリア機能と、インスリン感受性の増強により引き起こされている可能性が高いことを発見しました。
また、心肺機能の改善は、左心室機能の増加と、中枢および抹消動脈コンプライアンス(柔軟性)が向上することで起きているようだと報告しています。
少量のHIITが効果を生む生理学的な理由を十分に理解するためには、さらなる研究が必要でしょう。
しかし、これらのメカニズムによって、WHOの報告よりもはるかに少ない時間とエネルギーで、代謝や動脈の健康、心肺機能に優れた改善をもたらすことが可能だといいます。
「WHOのガイドラインは、幅広い人口レベルで目的を果たすものかもしれませんが、専門家によって提供される調整された少量のHIITは、特に時間のない個人にとってより効果的な可能性があります」
今回の研究を報告している西シドニー大学のアンジェロ・サバグ博士はそのように述べています。
1日中座りっぱなしになることの健康リスクは、最近は多くの研究が報告している事実です。
パンデミックのために年間を通して運動が不足がちになっている人、また長時間の座り仕事に従事している人にとって、この研究は特に重要な報告かもしれません。
辛いトレーニングを健康のために無理して長時間続けることは無理でも、短時間のトレーニングを無理なく続けるなら頑張れるという人も多いでしょう。
短時間のHIITトレーニングは、長時間連続して行う運動より楽しく感じる人が多いという研究報告もあります。
無駄になることはないので、短時間でもいいから毎日運動するということが、重要なようです。