原因は降雨だけじゃない?
考えてみると、アメリカ東部は核実験が行われた場所から比較的遠方にあります。
それでも、核実験に近い場所の食品より多量のセシウム137が見つかりました。
一体なぜでしょう?
その理由について、カースト氏は「土壌中のカリウム濃度の低さが原因」と考えます。
カリウムは植物が代謝プロセスに必要な栄養源として吸収するものですが、今回のハチミツがある東部の土壌を調べると、カリウム濃度が低いことが分かりました。
実はカリウムとセシウムには原子的な類似性が多くあり、カリウムが少ない土壌で植物が十分な量の栄養素を摂取できない場合、代わりにセシウムを吸収することになります。
つまり、冷戦期に東部の土壌に降下したセシウム137が植物のミツに吸収され、それがミツバチに伝わり、ハチミツ中のセシウム濃度を高めていたのです。
不幸中の幸いで、ハチミツに検出されたセシウムは人体に危険な基準値を下回っていましたが、今回の結果は、私たちの背筋を凍らすのに十分な恐さがあります。
また、近年の科学界では、ミツバチをはじめとする受粉媒介昆虫の減少が問題視されています。
冷戦時代の核実験が、その主要な要因とは考えられませんが、カースト氏は「ミツバチのコロニーの崩壊や個体数の減少への影響は無視できない」と指摘しています。