危険なお酒の飲み方をする女性が増えている
1世紀ほどの間、女性と男性のアルコール消費量にはかなり格差があったことがわかっています。
2016年に出された数十の関連研究を分析した報告によると、以前男性と女性の危険な飲酒習慣の比率は3:1でしたが、現在世界的にこの比率は1:1に近づいているといいます。
また、2019年に発表された最新の米国のデータでは、10代から20代前半の女性は、同世代の男性よりも高い割合で飲酒や酩酊を報告しており、これは調査開始以来初めてのことだと研究者は語っています。
飲酒量の男女差はすべての年齢層で縮小傾向にあります。ただ、その理由は年齢ごとに異なっているようです。
26歳以上では、女性の方が男性よりも早く飲酒量が増えていくため格差が縮小しています。
一方、26歳未満の若年層では、最近良く耳にするようにお酒を飲む人が減ってきていて飲酒量は減少しています。ただ、女性の方がこの減少速度が遅いため、結果的に男女間の飲酒量格差が縮まっています。
もともと男性に比べて女性の飲酒量が控えめであったことには、医学的な理由があり女性は男性に比べてアルコール分解速度が遅い傾向にあります。
もちろん酒豪の女性もいるのですべての人に当てはまることではありませんが、傾向としてはお酒をあまり飲まない女性の割合が増えることになります。
このため、女性は男性に比べてアルコール摂取量が少なくても、肝臓病、心臓病、がんなど、アルコールによる健康被害を受けやすいことがわかっています。
では、なぜ最近になって女性の飲酒量が増えているのでしょうか?
男女平等の観点からすれば、女性もお酒を楽しむようになったということで、別に悪いことではないんじゃないか、と考える人もいるかもしれません。
しかし、米国国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所( NIAAA )の上級科学顧問であるアーロン・ホワイト( Aaron White)氏は次のように語ります。
「これは進歩のように聞こえるかもしれません。しかし、実際はより大きな問題を示唆している可能性があります。
なぜなら飲酒している人の多くは、楽しみのためではなくストレスに対処するために飲酒しているのではないかという懸念があるからです」
お酒を飲む理由について、女性は男性よりストレス対処のために飲む傾向が高いとする研究報告があります。
また調査によると、楽しみとしての飲酒ではなく、ストレス対処の目的で飲酒する人は、アルコール使用障害(アルコール依存症と乱用を統合した最近の呼び名)になるリスクが高くなるといわれています。
その原因について、アルコールには一時的に心を落ち着かせる効果がありますが、実際には不安や抑うつを増大させる可能性があると示唆する研究報告があります。
また、いくつかの研究は、アルコールに対する反応として男性より女性の方がより早くうつ病につながる可能性があると示しています。
そのため、飲酒量の男女格差が縮小したという話題には、お酒を楽しむ女性が増えたというポジティブな見方より、現代の深刻なメンタルヘルスの問題を危惧する意見のほうが強いのです。