鳥たちにとってのイケメンとは
もう1つ重要な要素は、彼らの歌には求愛の意味があるという点です。
鳴鳥(なきどり)と呼ばれるさえずりの美しい鳥たちは、主に求愛のために歌います。
1930年代には、科学者たちはオスの方が、メスよりも音の擬態能力に優れているということに気づきます。
これは主にオスが交尾のために、メスを引き寄せる目的で声を学習するためと考えられています。
彼らはモテる目的で歌がうまくなったわけです。
当然モテるオスは子孫を作る機会が増えます。
そのため進化の系統で継承されていくのは、歌の学習能力や再現能力の高い要素となっていくのです。
しかし、ここで1つ疑問が浮かびます。
ウグイスは常に「ホーホケキョ」と種族固有の歌を覚えるのに対して、オウムなどは全然関係ない人間という種族の言葉を真似します。
ここには大きな違いがあるように思えます。
なぜ、オウムは他種族の言葉を真似るのでしょう?
それはオウムという種族が、常に新しいものに惹かれる先進的な嗜好を持っていたためです。
人間でも歌を聞く場合、ボカロのような新しくて変わったタイプの楽曲に飛びつく人もいれば、「あんなもん歌じゃない!」と拒絶して新しい文化を受け入れられない人もいます。
言ってしまえば、ウグイスのような鳥たちは「クラシックしか音楽は認めない!」という一派であり、オウムは「今まで聞いたことのない新しいものが好き」という一派なのです。
当然オウムのメスも、古臭い歌より、聞いたことのない新しい歌を披露するオスに惹かれて子孫を残します。
そのためウグイスは種族伝統の歌を上手に覚えて真似ていったのに対して、オウムはこれまで聞いたことのない他種族の鳴き方を学習する能力と、それを再現できる幅広い声域を獲得していきました。
そして結果的に、オウムは聞き慣れない人間の話し言葉さえ、それを正確に学習してマネるようになったと考えられるのです。
事実、人に飼われていたオウムが野生に帰った際、覚えた人間の言葉を仲間に披露したことで、野生のオウムの間で人間の言葉が流行ってしまったという奇妙な事例がオーストラリアで報告されています。