自閉症の子どもたちと響き合う「マインクラフト」
「Autcraft」立ち上げからわずか3年で、このコミュニティのメンバーは約7000人に膨れ上がりました。
このコミュニティには、今やさまざま活動をサポートする管理者チームも存在し、ダンカン氏自身、このサーバーの運営がフルタイムの仕事となりました。
子どもたちにとって、マインクラフトは現実のプレッシャーを取り除き、本当の自分になれる場所となっていたのです。
そして、このサーバーの存在は、カリフォルニア大学アーバイン校の研究者ケイト・リングランド氏の目に留まります。
彼女は60時間近くをかけて、この仮想世界に入り込み、子どもたちがどのように遊んでいるのか、どんな会話をしているのかを観察しました。
そして、「Autcraft」が単なるオンラインコミュニティではなく、自閉症の子どもたちが社会性を身につけるツールとして役立っているのだと理解したのです。
彼女は、この研究内容を、後にカリフォルニア州サンノゼで開催された「Human Factors in Computing conference」で発表しました。
自閉症の子どもたちは、社会の曖昧なルールを理解したり、他人の視線の意味を理解することができません。
しかし、ゲームの世界では相手の表情や視線を気にする必要はありません。
特にマインクラフトは作るという行為に特化している面があります。
何かを創作するという行為が、他者へ向けた表現やコミュニケーションとして機能するのです。
そうした環境が、自閉症の子どもたちとすこぶる相性がよかったのでしょう。
英国のニュースメディア「The Guardian」紙でゲーム記事の編集者を務めるキース・スチュアート氏も、自閉症の息子がおり、マインクラフトに救われた経験を持っています。
彼は、個人的なことですが、と前置きして息子とのマインクラフトの体験について記事を執筆しています。
「ほとんどのゲームにはミッションや目的があり、プレイヤーを決まった方向へ向かわせます。
マインクラフトには、たくさんのツールと広い世界が用意されていて、自分のやりたいことができます。
ザック(キース氏の息子)が風景を見て回ったり、羊を狩ったり、穴を彫りたいと思えば、それは全て可能なのです。
彼は自分自身を自由に表現することができます。
ツールはありますが、それはとても明確で、変わることはありません。
開放感と明確なルールという強力な組み合わせは、間違いなく息子に魅力的です」