フォボスからサンプル回収する利点
現在火星の月であるフォボスの起源については、2つの可能性が考えられています。1つはD型小惑星が火星重力に捕獲されて衛星となったという説。
2つ目は、太古に火星に落下した巨大隕石の衝撃によって、吹き飛ばされた破片から形成されたというジャイアントインパクト説です。
地球の月については、ジャイアントインパクト説が有力ですが、火星のフォボスについては起源を確定させる証拠は見つかっていません。
MMXの持ち帰るサンプルには、もしフォボスの起源がD型小惑星の捕獲だった場合と、ジャイアントインパクトだった場合で、異なる物質が採取されると期待できます。
つまり、MMX計画は火星生命の痕跡だけでなく、フォボスの起源についても迫ることが期待できるのです。
また、現在宇宙からのサンプルリターンについては、未知の微生物を地球へ持ち込む可能性が懸念されていて、探査形態によって分類された惑星保護方針の規定が存在します。
しかし、今回のMMX計画によるサンプルは、衝突滅菌と放射滅菌によって微生物は死滅している状態のため、惑星保護分類に影響を与えることがありません。
MMX計画が持ち帰るサンプル中に生きた微生物が存在する確率は、100万分の1以下であり、安全な死骸のサンプルとなるのです。
これもサンプルリターン計画においては、重要なポイントです。
さらに最新の研究では、フォボス表面から期待できる火星サンプル量が従来見積もりの10~100倍多いという報告もされています。
さまざまな利点を持つMMX計画。
日本は再び、宇宙研究においてもその技術力の高さを世界に示すことができるのでしょうか?
もちろん、こうした計画は単に早さを競い合っているわけではありません。
MSRとMMXは、それぞれに意義があり、2つの計画が連携することで、NASAと日本の研究は互いを補完し合うことが期待できます。
それはもし火星に生命が存在した場合、いつどこで出現し進化していったのか、その疑問につながるヒントが手に入るかもしれません。