木材をナノ発電機にする
ナノ発電機とは、微小な物理現象からエネルギーを取り出して電気に変化する技術のことです。
電気を生む微小な物理現象として有名なのは「摩擦電気」です。
これはいわゆる静電気を発生させる効果のことを指します。
あらゆる物質は、電荷を持った原子と電子でできているため、異なる材料同士を接触させると電荷の移動が起こります。これを接触帯電と呼びます。
この現象は接触面積に応じて効果が大きくなるため、擦り合わせると電荷の移動が多くなります。
とはいえ、この現象は起こりやすい材料と起こりづらい材料があります。
木材は、電子を失う傾向も、引き寄せる傾向もあまりないため、摩擦電気を起こす材料としてはふさわしくありません。
しかし、木材は建築材料として有能で、さまざまな場面で利用されています。
もし、木材から効率的に摩擦電気を取り出すことができれば、例えば床を歩くだけで電気を生み出すことも可能になります。
そこで今回の研究チームは、木材をうまく改良して摩擦電気特性を高め、ナノ発電機として利用できないかと考えたのです。
木材の摩擦電気特性を高めるためには、電子を集めやすい材料と、電子を手放しやすい材料で木材を挟むのが効果的です。
チームはいくつかの材料を試した結果、シリコン材料(PDMS)で木材の一方をコーティングすると電子を捕獲しやすくなり(負に帯電)、金属ナノ粒子(ZIF-8)でコーティングすると、木材は電子を失いやすくなる(正に帯電)ということを発見しました。
また利用する木材についても、いろいろ試した結果、ヨーロッパでは一般的な建設用木材であるトウヒ材が、他の木材と比べて80倍もの電力を生成できることを発見しました。
これを元にして、チームは木材のナノ発電機を開発したのです。