ヒットソングの流行とウイルス感染の類似性
「情報が持つ遺伝子」のような概念を、「ミーム」と呼びます。
これは文化や「流行り」の広がりと変化が、生物の遺伝的な継承と進化に似て見るというところから誕生した言葉です。
確かに、文化は好ましい部分が残り、そうでない部分は淘汰され、まるで生物のように徐々に進化をしていくように見えます。
ただ、これはあくまで比喩であって、文化や「流行り」のような形のないものに、遺伝子に当たるものがどのように含まれるかはよくわかりません。
しかし、この考え方は現実の現象と比較しても、間違ってはいなかったようです。
生物の世界には、遺伝子しか持たず、それをコピーして広がっていく生き物がいます。
そう、今現在も人類を苦しめているウイルスたちです。
このウイルスの感染蔓延を予測する一般的な方法として、「SIRモデル」と呼ばれる感染症モデルが存在します。
SIRとは「感受性(susceptible)ー感染性(infectious)ー隔離または回復(removed/recovered)」のことで、この3つの区分を元にして、このモデルは感染の時間的な変化を予測します。
今回の研究チームは、ウイルスの感染と、歌の流行の伝播に類似性がないかということを調査しました。
研究では、オンライン音楽ストリーミングサービス「MixRadio」のデータが分析されました。
これは2007年から2014年にかけて、英国ノキア社の携帯電話からダウンロードされた楽曲に関するデータです。
すると、レディー・ガガなど一部の人気曲のダウンロードパターンが、SIRモデルにぴったり当てはまったのです。
そのため、研究者たちは感染症の伝播と歌の伝播には、同じような社会的メカニズムが存在するのではないかと考えはじめました。
しかしそこには、どんな原因が考えられるのでしょうか?