チームフローが発生するとチームのパフォーマンスが上昇する
人間が何かに没頭するとき、やる気や集中力について心配する必要はなります。
いわゆる「没頭」が起き、フロー状態に入ると、人間の脳ではドーパミンやアドレナリンといった報酬系や覚醒度を高める脳内物質が分泌され、時間を忘れてタスクに取り組むことが可能になるからです。
またそうした状態にあるときに行われるタスクのパフォーマンスは、通常時を遥かに上回る可能性が高くなります。
一方、このようなフロー状態はチームとして行動するときにも発生することが知られています。
チームフローが起こると、チームのパフォーマンスも限界を超えて上昇していき、チーム競技では勝利を、バンド演奏では伝説的なライブを、会社のチームプロジェクトでは大成功の要因となります。
しかし、個人で完結するソロフローと比べて、チームフローの調査は非常に困難でした。
バスケットボールの選手の頭に脳波測定装置をつけて、延々とプレーをしてもらったとしても、得られるのは選手ごとの主観(チームフローにあった、なかった)に依存した結果のみだからです。
そこで今回、カリフォルニア工科大学の研究者たちは、聴覚をもとにしたフローレベルの客観的な測定装置を開発しました。
フロー状態にある人間の脳は、雑音に対して耐性があり、タスク中に異音を聞かされても、聴覚の反応レベルが小さくなります。
一方で、フロー状態にない人間は異音に対して通常時と同じ反応レベルとなります。
つまりこの仕組みは、集中していると雨の音や工事の音が気にならない……という現象を尺度として利用したものになります。
研究者たちはこの測定法を使用しながら、被験者たちにタイミングに合わせてボタンを押す音楽ゲームを、2人1組で3つの条件のもと、やってもらいました。
1つ目の条件は、2人の間に壁を設置してソロフローは可能なもののチームフローが不可能な場合。
2つ目の条件は、プレイする音楽がときどき不協和音を発し、ソロフローもチームフローも不可能で、単純なチームワークのみが存在するもの。
3つ目の条件は、一切の制限なく、2人がチームフローを構築できる場合でした。
研究者たちはこれら3つの場合におかれた被験者たちの脳活動を測定して、ソロフロー・ただのチームワーク・チームフローの違いを調べました。
結果、チームフローが起きているときには、どの被験者の脳でも中側頭皮質でベータ波とガンマ波の特徴的な増加がみられることが発見されました。
中側頭皮質でのこれらの活動は、ソロフローや単純なチームワークではみられないパターンでした。
この結果は人間には、最高のチームを形成するための脳領域が、誰にでも生まれつき備わっていることを示します。
しかしより興味深い結果は、チームメイトどうしの脳活動を比較したときに明らかになりました。