人間が光速に近づくと何が起きるのか?
光は真空中を毎秒約30万キロメートルで移動します。
もしこの速度に近づいて人間が移動したとき、世界の見え方には明らかな異常が発生すると考えられます。
しかし、人間がこれまでに成功した最高速度は、光速の約0.0037%に過ぎません。
そこで物理学者たちは、思考実験によって人間が光速に近づいたとき、何が起きるかをさまざまに予想してきました。
アインシュタインの特殊相対性理論では、光速に近づくと時間の流れが遅くなり、物体の長さは実際よりも短くなるといいます。
また、光のドップラー効果が目で見てもわかるレベルで色彩に変化を及ぼすようになります。
音のドップラー効果は、誰もが理科で聞いたことのある通り、近づいてくる救急車は音の波長が縮まることで高い音に聞こえ、通り過ぎて離れていくときは音の波長が伸びて低い音に聞こえるというものです。
光も音と同様に波としての性質を持ち、波長によって私たちに見える色というものが決定されています。
つまり音が低くなったり高くなったりするように、光速に近い速度で人が移動すると、光の波長が目に見える形で縮んだり伸びたりするため、視界が青くなったり赤くなったりするわけです。
しかし、これはなかなか常人にはイメージしにくい話です。
そうしてこうした問題は、人間が光速に近づく代わりに、光の速度が遅くなったと考えても同じことが起きるのです。
こちらの方が、いくぶんイメージは作りやすい感じもします。
そこで、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のゲルト・クルトマイヤー(Gerd Kortemeyer)氏のチームは、この通常ではありえない特殊な状況を、ゲームの中の世界で表現しようと考えたのです。