しっぽを切って逃げ、壁にはりつき、色を変える。
約7000種の、うろこの名人たち。
- ナゾロジーの記事
- 35本
- なかま
- 約7000種
- しっぽの再生にかかわる遺伝子
- 326個ほど
トカゲは、うろこにおおわれた爬虫類で、ヤモリやカナヘビ、カメレオン、イグアナもなかまです。世界に約7000種がいて、日本ではニホントカゲやニホンカナヘビ、ニホンヤモリが身近です。多くのトカゲは、しっぽを自分で切って逃げ、また生やすことができます。
図鑑データ
- 分類
- 動物界 › 脊索動物門 › 爬虫綱 › 有鱗目(ヘビなどをのぞいたもの)
- 学名
- Lacertilia(トカゲ亜目。ヘビをふくまないため、分類学では1つのまとまりとみなさない考え方もある)
- 英名
- lizard(リザード)。ヤモリは gecko(ゲッコー)
- 漢字
- 蜥蜴、石竜子
- 種の数
- 約7000種(爬虫類でいちばん多い)
- 大きさ
- ブルケシア・ナナ(カメレオン)のオスは全長21.6mm、コモドオオトカゲは全長3mほど
- 体のつくり
- うろこのある皮ふ。多くは4本の足と長いしっぽ。肺で呼吸する
- すみか
- 南極大陸をのぞくすべての大陸と多くの島。海辺から標高5000mまで
- 日本では
- ニホントカゲ、ヒガシニホントカゲ、ニホンカナヘビ、ニホンヤモリなど。南西諸島にはリュウキュウキノボリトカゲやクロイワトカゲモドキのなかまなど
- 食べもの
- 多くは昆虫などの小さな虫。大きなオオトカゲは哺乳類や鳥も。植物がおもな食べ物の種は約2%
- 寿命
- ニホンカナヘビは10年くらい(多くは2〜3年)。コモドオオトカゲは30年ほどと推定
- 増え方
- 多くは卵生。約20%の種は胎生。メスだけで増える種もいる
トカゲとは(何類? 爬虫類? 何科?)
トカゲは、うろこにおおわれた体をもつ爬虫類です。多くは4本の足と長いしっぽをもっています。分類では、ヘビと同じ「有鱗目(ゆうりんもく)」というグループにふくまれ、有鱗目のうちヘビなどをのぞいたものを、まとめて「トカゲ」と呼んでいます。有鱗目の学名 Squamata は、ラテン語で「うろこをもつもの」という意味です。トカゲは世界に約7000種がいて、爬虫類の中でいちばん種類の多いグループです。
身近なニホントカゲのほか、ヤモリ、カナヘビ、カメレオン、イグアナ、コモドオオトカゲ(コモドドラゴン)も、みんなトカゲのなかまです。トカゲはたくさんの科に分かれていて、ニホントカゲはトカゲ科(スキンク科)、ニホンカナヘビはカナヘビ科、ニホンヤモリはヤモリ科に入ります。ほかにも、オオトカゲ科、ドクトカゲ科、アガマ科、カメレオン科、イグアナ科などがあります。
ヘビは、トカゲのなかまから進化したと考えられています。そのため、トカゲの中には、ほかのトカゲよりもヘビに近いものもいます。足のないトカゲもいて、手足が小さくなったりなくなったりする進化は、トカゲのいろいろなグループで何度も別々に起きました。
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トカゲだとはっきり分かるいちばん古い化石は、ジュラ紀の中ごろのものです。トカゲは、恐竜を絶滅させた白亜紀の終わりの大量絶滅も乗りこえてきました。2025年に発表された研究では、ヨルトカゲのなかまの祖先が、巨大隕石の落ちたメキシコのユカタン半島に近いメキシコ湾のまわりで、この大量絶滅を生きのびていたことが分かりました。
爬虫類と両生類のちがい(ヤモリとイモリ)
トカゲは爬虫類で、カエルやイモリは両生類です。トカゲの皮ふは、ケラチンというかたい物質でできたうろこでおおわれていて、体から水分がにげにくくなっています。そのおかげで、とても乾いた砂漠でもくらせます。いっぽう両生類の皮ふはなめらかで、体をおおうようなうろこがなく、乾燥に弱いのがちがいです。
名前のよく似たヤモリとイモリも、まったく別のなかまです。ヤモリはトカゲのなかま(爬虫類)で、イモリはサンショウウオと同じ有尾目(ゆうびもく)の両生類です。トカゲは肺で呼吸し、卵を産む種は、陸の上の巣やすき間などに卵を産みます。両生類の多くは水の中に卵を産み、子ども(幼生)はえらで呼吸して水の中で育ちます。
ムカシトカゲはトカゲじゃない
ニュージーランドにすむムカシトカゲ(トゥアタラ)は、名前も姿もトカゲにそっくりですが、トカゲとは別の「ムカシトカゲ目」の爬虫類です。このグループは、恐竜がいた中生代にはたくさんの種がいましたが、今生き残っているのはムカシトカゲ1種だけです。トカゲにいちばん近い親せきとされています。
大きさと体のつくり(特徴)
トカゲの大きさは、種によって大きくちがいます。いちばん大きいトカゲはインドネシアの島々にすむコモドオオトカゲで、全長3mほどになり、野生のおとなの体重は70kgほどです。反対にとても小さいのが、マダガスカルのカメレオン「ブルケシア・ナナ」です。2021年に新種として発表されたこのカメレオンのオスは、頭から胴までの長さが13.5mm、しっぽまで入れても21.6mmしかありません。世界でいちばん小さい爬虫類かもしれないとされています。ただ、ほとんどのトカゲは、わりあい小さな動物です。

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体のつくりには、トカゲならではの特徴がたくさんあります。
- うろこと脱皮:体はうろこのある丈夫な皮ふにつつまれています。この皮ふは、体が大きくなるにつれて古いものがはがれ落ちます(脱皮)。ヘビは古い皮を1枚につながったままぬぎますが、トカゲの皮はいくつかに分かれてはがれます。ヤモリには、ぬいだ皮を食べてしまうものもいます。
- 舌:オオトカゲのなかまなどは、先が2つに分かれた舌を、たえず出し入れします。舌の先でまわりの空気中のにおいの粒をとらえ、口の中にある「鋤鼻器(じょびき)」という器官に運んで、まわりのようすを知るためです。においとも味とも少しちがう感覚とされます。
- 目とまぶた:多くのトカゲにはまぶたがありますが、ヤモリの多くにはまぶたがありません。目は透明なうろこでおおわれていて、まばたきができないかわりに、舌で目をなめてきれいにします。ただ、ヤモリのなかまでも、トカゲモドキ科の種にはまぶたがあります。
- 耳:外に出た耳たぶのようなものはなく、頭の横の穴の奥に鼓膜が見えます。耳の穴がない種もいます。
- 頭のてっぺんの「目」:イグアナのなかまなどには、頭のてっぺんに「頭頂眼(とうちょうがん)」という器官があります。ものの形は見えませんが、明るさの変化や動きを感じとり、上から近づく敵に気づくのに役立ちます。絶滅したオオトカゲのなかま「サニワ」の化石では、頭頂眼のほかにもう1つ光を感じる器官があり、目が4つあったことが分かっています。

トカゲは肺で呼吸します。2013年と2014年の研究では、サバンナモニター(オオトカゲの一種)とグリーンイグアナの肺の中で、空気が一方向にぐるりと流れるしくみが見つかりました。それまで、このしくみはワニや鳥だけのものと考えられていました。
どこにいる? 日本のトカゲ(カナヘビ・ヤモリとのちがい)
トカゲは、南極大陸をのぞくすべての大陸と、海に浮かぶ多くの島々にすんでいます。海辺から標高5000mほどの山まで、砂漠、草原、森、岩場、木の上、地面の下、水辺など、さまざまな場所で見られます。とくにあたたかい熱帯に多く、ガラパゴス諸島のウミイグアナのように、海でえさをとるものもいます。人の家のまわりにすみつく種もいて、ヤモリのなかまには、人家を主なすみかにするものもいます。
トカゲは、海をこえて遠くの島にたどりつくこともあります。2025年に発表された研究によると、太平洋の島国フィジーにすむイグアナの祖先は、北アメリカ西部から、海を漂うものに乗って8000km以上も旅をしてきたと考えられています。陸の脊椎動物が海をわたった例としては、知られている中でいちばん長い距離です。
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日本で見られるトカゲ
日本には、トカゲ科、カナヘビ科、ヤモリ科、トカゲモドキ科、アガマ科などのトカゲがすんでいます。南西諸島には、アガマ科のリュウキュウキノボリトカゲや、奄美群島と沖縄諸島だけにすむクロイワトカゲモドキのなかまなど、その地域ならではの種もいます。トカゲモドキという名前ですが、ヤモリに近いなかまで、ふつうのヤモリとちがってまぶたがあります。クロイワトカゲモドキは沖縄県の天然記念物で、環境省のレッドリストで絶滅危惧種とされています。
本州・四国・九州の身近な場所でよく見られるのは、ニホントカゲ(東日本ではヒガシニホントカゲ)、ニホンカナヘビ、ニホンヤモリです。東日本のものは、2012年にニホントカゲとは別の種「ヒガシニホントカゲ」として分けられ、今のニホントカゲは、近畿地方と、それより西の本州、四国・九州にすむものを指します。ニホンカナヘビは日本だけにすむ種で、北海道から九州まで広く見られます。ニホンヤモリは本州と、それより南の地域で見られますが、日本のものは約3000年前ころに外から入ってきたと考えられています。
ニホントカゲ・カナヘビ・ヤモリの見分け方
- ニホントカゲ(トカゲ科):全長16〜25cm。子どもは黒っぽい体に5本の明るい縦じまがあり、しっぽは青色です。おとなのオスは茶色っぽく、体の横に太い茶色の帯があります。おどろくと、石の下や倒れた木の下にかくれます。
- ニホンカナヘビ(カナヘビ科):全長16〜25cmで、その3分の2以上をしっぽがしめる、ほっそりした体つきです。うろこにはつやがなく、ざらざらして乾いた感じに見えます。背中は灰色がかった茶色で、体の横に黒っぽい帯があります。茂みに逃げこむことが多く、高さ2mくらいまでなら木にも登ります。
- ニホンヤモリ(ヤモリ科):全長10〜14cmほどで、体は平たく、色は灰色や褐色です。まわりに合わせて体の色をこくしたりうすくしたりできます。夜に活動し、昼は壁のすき間などで休みます。指の裏にあるひだで、ガラスの壁にもはりついて歩けます。暗いところでも色を見分けられる目をもっています。


日なたぼっこと冬眠
トカゲは、まわりの温度で体温が変わる変温動物です。そのため多くのトカゲは、日光を浴びて体を温めてから、活発に動きはじめます。ニホントカゲは、日当たりのよい草地や斜面、石垣や墓地のような石の多い場所を好みます。ニホンカナヘビも、体温を上げるために日の当たるところでじっとしている姿がよく見られます。ただし真夏の暑い昼間は日かげで過ごし、朝や夕方によく姿を見せます。トカゲの多くは昼に活動しますが、ヤモリのなかまの多くは夜に活動します。
本州などのトカゲは、冬になると冬眠します。ニホントカゲは日当たりのよい斜面の土の中や石垣、ニホンカナヘビは日当たりのよい斜面の土の中、ニホンヤモリは壁のすき間や縁の下などで冬をこします。
夜はどこで寝る?
ニホンカナヘビは、夜は茂みや葉の上で眠ります。木の上でくらすグリーンアノールも、夜は木の枝や葉のすき間などのせまい所で休みます。反対に、夜に活動するニホンヤモリは、昼間に壁のすき間などで休んでいます。フトアゴヒゲトカゲやテグーというトカゲの眠りを調べた研究では、眠りに2つの状態があり、そのうちの1つは目が動くなど、哺乳類や鳥の「レム睡眠」に似たところがあると報告されています。
何を食べる?
トカゲの多くは肉食で、いちばんよく食べるのは昆虫などの小さな虫です。ニホントカゲは昆虫やミミズ、クモなどを食べ、ときには果物も食べます。ニホンカナヘビやニホンヤモリも、昆虫やクモ、ワラジムシなどを食べます。ニホンヤモリは、明かりに集まる虫を目当てに、夜、電灯のまわりによく現れます。

多くのトカゲは、じっと待ちぶせして、近づいてきたえものをとらえます。カメレオンは、枝の上で目だけを動かしてえものを探し、ねらいを定めると、ねばねばした長い舌を発射します。舌は、しっぽをのぞいた体の1.5〜2倍の長さがあるとされ、速いときはわずか0.07秒でえものに届きます。

アリを専門に食べるトカゲもいます。オーストラリアの砂漠にすむモロクトカゲは、アリの行列のそばで立ち止まり、短い舌でアリを次々と食べていきます。一度に1000匹以上を食べることもあります。北アメリカのツノトカゲのなかまも、アリをよく食べることで知られます。
大きなオオトカゲのなかまは、魚やカエル、鳥、哺乳類、ほかの爬虫類など、大きなえものも食べます。コモドオオトカゲは、イノシシやシカ、スイギュウのような大きな動物までしとめ、動物の死体もよく食べます。体重50kgのコモドオオトカゲが、31kgの死体を17分で食べたという記録もあります。のこぎりのようなぎざぎざのある歯は、先やふちが鉄をふくむオレンジ色の層でおおわれていて、切れ味を保つのに役立っていると考えられています。
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植物をおもな食べ物にするトカゲは少なく、全体の種の2%ほどです。そうした種はイグアナのなかまに多く、子どものころから植物をおもに食べる種もいます。このとき子どもは、おとなのふんを食べて、植物の消化に必要な腸内の微生物をとり入れます。ガラパゴス諸島のウミイグアナは、海で海藻を食べる、今のトカゲではほかにいない変わり種です。海藻といっしょにとりこんだ塩分は、鼻の近くにある特別な腺から、くしゃみのように吹き出して捨てます。

共食いすることも
トカゲの中には、同じ種のなかまを食べるものもいます。ニホンカナヘビでは、まれにおとなが子どもを食べることが確かめられています。コモドオオトカゲでは、おとなの食べものの10%ほどを子どもがしめるとされ、子どもは生まれてから数年の多くを木の上ですごして、おとなからのがれます。
しっぽ切りと再生(なぜ切れる? また生える?)
トカゲの中には、敵にしっぽをつかまれたりすると、しっぽを自分で切りはなして逃げるものがいます。これを「自切(じせつ)」といいます。ニホントカゲやニホンカナヘビ、ニホンヤモリも自切をします。切れたしっぽは、しばらくのあいだくねくねと動き回り、敵の注意をひきつけます。そのすきに本体は逃げるのです。ニホンヤモリの切れたしっぽは10分ほど動き続け、ヒョウモントカゲモドキでは30分も動くことがあります。
しっぽがかんたんに切れるのは、多くの種で、しっぽの骨(椎骨)に、もともと切れやすい「自切面」という節目があるからです。骨と骨のあいだで切れる種もいます。骨の途中にあるこの面で、筋肉を縮めて骨を割るように切りはなすトカゲもいます。切り口では筋肉がきゅっと縮まって血管をしめるので、血はあまり出ません。
ニホントカゲの子どものように、しっぽがあざやかな青色をしたトカゲもいます。いくつかの種では、この目立つ青いしっぽが、敵の攻撃を頭や体ではなくしっぽに向けさせることが確かめられています。

切れたしっぽは、数週間かけてふたたび生えてきます。ただし、元どおりにはなりません。再生したしっぽ(再生尾)の中には骨がなく、かわりに筒の形をした軟骨がささえています。色や模様がちがっていたり、元より短かったりすることが多く、見た目で区別できます。ときには、しっぽが二またに分かれて再生することもあります。トカゲのしっぽの再生には、約326個の遺伝子がかかわっていることも分かっています。

しっぽの再生は、再生医療の手がかりとしても研究されています。2021年に発表された研究では、卵の中で育っている途中のトカゲ(胚)からとり出した神経の幹細胞を遺伝子編集し、しっぽを再生中のおとなに移植しました。すると、再生しっぽの中で軟骨ができるのをおさえることができ、元のしっぽに近いつくりの再生に向けた一歩になったとされています。
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しっぽ切りは便利な技ですが、代わりに失うものもあります。しっぽは体を動かすときにも使われ、脂肪をたくわえる場所にもなっているからです。しっぽを失ったことで、なかまの中での地位が下がったり、繁殖がうまくいかなくなったり、産む卵が小さくなったり、卵を産まなくなったりする種も知られています。そのため、しっぽ切りはほかの守り方がだめだったときの最後の手段とされます。また、すべてのトカゲが自切できるわけではなく、自切しても再生しっぽが生えない種もいます。
トカゲがしっぽを切りすてて逃げることから、日本語では、組織が立場の弱い人に責任をおしつけて、自分たちは生きのびようとすることを「トカゲのしっぽ切り」といいます。
トカゲの能力(はりつく足・色を変える・身の守り方)
ヤモリはなぜ壁やガラスにはりつける?
多くのヤモリは、指の裏に「趾下薄板(しかはくばん)」というひだがあり、ガラスの壁や天井にもはりついて歩けます。ひだには、とても細い毛(剛毛)がびっしり生えていて、1平方mmあたり約1万4000本もあります。毛の先はさらに細かく枝分かれしています。この毛と壁とのあいだにはたらく「ファンデルワールス力」という、分子どうしが引き合う弱い力を、たくさん集めてくっついていると考えられています。のりのような液体は使っていません。
このしくみは、ヤモリのなかまのほか、アノールのなかまにも見られます。ただし、ヤモリでもすべての種がはりつけるわけではありません。はりつく足をもつのは、ヤモリの種のおよそ60%です。ペットとして人気のヒョウモントカゲモドキの足にはこのひだがないので、つるつるのガラスの壁は登れません。ヤモリの足をまねた、くり返し使える接着テープの開発も進められています。

体の色を変える
カメレオンは、体の色を変えることで有名です。皮ふの中には「虹色素胞(こうしきそほう)」という細胞の層があり、その中のとても小さな結晶の並び方を変えることで、反射する光の色を変えています。色を変えるのは、身をかくすためだけではありません。なかまへの合図や、体温の調節のために色を変えることのほうが多いと考えられています。カメレオンは、左右の目を別々に動かして、前と後ろを同時に見ることもできます。
カメレオンのほかにも、まわりや気分に合わせて体の色を変えるトカゲは多く、ニホンヤモリやアノールのなかまも、体の色の濃さを変えます。モロクトカゲは、暑いときは明るい色に、涼しいときは暗い色に変わります。
走る・すべる・もぐる
中南米の川辺の森にすむバシリスクのなかまは、敵から逃げるとき、後ろ足だけで立ち上がって走り、そのまま水面の上をかけぬけます。大きな後ろ足の指にはひだがあり、水面をとらえやすくなっています。オーストラリアのアガマのなかまにも、2本足で走るものがいます。2008年の研究では、2本足で走っても4本足より速くはならず、強く加速したときに自然と2本足になると考えられました。ただし、自分から2本足で走ろうとしているように見える種もいて、まだ分かっていない利点があるのかもしれません。
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東南アジアなどにすむトビトカゲのなかまは、長くのびた肋骨(ろっこつ)で支えられた皮ふの膜をつばさのように広げて、木から木へ滑空します。全長20cmほどの小さなトカゲですが、60mも滑空した記録があります。
水辺にすむアノールのなかまには、敵におどろくと水にもぐり、鼻の上にできた空気の泡を吸ったりはいたりして、水の中で息をつなぐものがいます。2024年の研究では、泡が作れないようにしたトカゲにくらべて、ふつうに泡を使えるトカゲは、平均で32%長く水中にいられました。
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トゲ・血・おどかし(身の守り方)
トカゲの多くは、まず素早く走って逃げます。ほかにも、いろいろな守り方があります。オーストラリアの砂漠にすむモロクトカゲは、全身がとがったトゲでおおわれています。首の後ろには「にせの頭」とよばれるトゲのあるこぶがあり、敵がくると本物の頭を下げて、このにせの頭を差し出します。皮ふには細い溝が走っていて、体が少しぬれると、その水が毛細管現象で口まで運ばれます。

北アメリカのツノトカゲのなかまには、目のまわりの細い血管を破って、血を1.5mほど先まで飛ばす種がいます。この血はネコやイヌなどの敵がいやがる味です。ガマトカゲのなかまの一種(Phrynocephalus mystaceus)は、ふだんは頭の横にたたんでいるひだを、敵にとらえられそうになると大きく広げます。目立つ色のひだを急に見せて相手をおどろかせる「おどかし」の可能性があると考えられています。アオジタトカゲは、青い舌を見せて相手をおどします。
毒をもつトカゲ
トカゲのほとんどは毒をもちませんが、アメリカ南西部などにすむアメリカドクトカゲ(ギラモンスター)と、メキシコドクトカゲは、毒をもつことで知られています。ヘビとちがって毒は下あごの腺でつくられ、かみついているあいだに傷口から少しずつしみこませます。2000年代になって、コモドオオトカゲなどのオオトカゲのなかまにも、毒をもつ種がいることが分かってきました。
アメリカドクトカゲの毒にふくまれる「エキセンジン-4」という物質は、2型糖尿病や肥満の治療に使われる薬(GLP-1受容体作動薬)を生み出すもとになりました。
寿命と増え方(卵・繁殖期)
トカゲの多くは卵を産みます。卵の殻は多くが革のようにやわらかく、まわりと水分をやりとりできます。いっぽう、トカゲの約20%の種は、おなかの中で子どもを育ててから産む「胎生」です。卵を産む集団と子を産む集団がいるスキンクの一種では、子を産むはずのメスが、1回のお産で子と卵の両方を産んだ例も報告されています。
ニホントカゲは4〜5月に交尾をし、5〜6月に、石や倒木の下に掘った巣穴に5〜16個の卵を産みます。母親は、卵がかえるまでそばで守ります。繁殖期のオスどうしは、相手の頭にかわるがわるかみつき合う争いをしますが、これは相手の大きさや力を確かめ合う儀式のようなもので、頭をかみくだくようなことはありません。ニホンカナヘビは、春から夏にかけて、草の根元などに何回かに分けて卵を産み、ニホントカゲとちがって卵の世話はしません。卵はおよそ2か月でかえります。ニホンヤモリは5〜9月に、ねばねばした卵を2個ずつ、木や壁に産みつけます。
性別の決まり方もいろいろです。卵のまわりの温度で性別が決まる種もいれば、性染色体で決まる種もいます。オーストラリアのフトアゴヒゲトカゲは、ふつうは性染色体で性別が決まりますが、卵が高い温度で育つと、遺伝的にはオスの子がメスになります。2015年には、こうして性が逆転した個体が野生でも見つかりました。メスだけで子をつくる「単為生殖」をするトカゲもいて、ハシリトカゲのなかまにはメスしかいない種がいます。動物園のコモドオオトカゲでも、オスと会っていないメスが卵を産み、子がかえったことがあります。
寿命も種によってさまざまです。ニホンカナヘビは10年くらい生きるとされますが、多くは2〜3年ほどです。ヒョウモントカゲモドキは、野生では平均4.9年ですが、飼育下では20年以上生きることがあります。コモドオオトカゲは30年ほど生きると推定されています。いっぽうマダガスカルのラボードカメレオンは、一生の大半の8〜9か月を卵の中ですごし、かえってから4〜5か月で死んでしまいます。四肢動物でいちばん短い寿命の記録とされます。ただし、雨季の長い地域ではもっと長く生きたり、次の繁殖期まで生き残ったりする個体もいることが分かっています。
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名前の由来と人とのかかわり
「トカゲ」は漢字で「蜥蜴」や「石竜子」と書きます。ヤモリは、家のまわりでよく見られ、家を守ってくれる生き物と考えられてきたことから、「家守」や「守宮」と書きます。英語では、トカゲは lizard(リザード)です。ヤモリは英語で gecko(ゲッコー)といい、これはマレー語から来た言葉で、もとはトッケイヤモリの鳴き声をまねたものです。トカゲにはめずらしく、ヤモリのなかまには鳴き声を出す種が多いことでも知られます。
トカゲは、ペットとしても人気があります。世界では、フトアゴヒゲトカゲやヒョウモントカゲモドキ、イグアナ、アノールのなかま、ヤモリのなかまなどが、たくさん飼われています。日本では、ニホンカナヘビも人気のあるペット爬虫類の1つです。
ほとんどのトカゲは、人に害をあたえません。ただし、いちばん大きなコモドオオトカゲは、まれに人をおそい、死なせてしまった例もあります。コモドオオトカゲは、すむ場所がせまくなっていることなどから、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種とされ、インドネシアの法律で守られています。1980年には、コモドオオトカゲを守るためにコモド国立公園がつくられました。
外来種のトカゲ
人に持ちこまれて、もともといなかった場所で問題になっているトカゲもいます。アメリカ南東部などが原産のグリーンアノールは、1960年代に小笠原諸島の父島へペットとして持ちこまれ、野生化して数をふやしました。2007年の時点で、小笠原での数は600万匹と推定され、島にしかいない昆虫などに大きな被害をあたえています。グリーンアノールは、法律で「特定外来生物」に指定されています。
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よくある疑問
- トカゲは何類? 爬虫類? 両生類?
- トカゲは爬虫類です。ヘビと同じ「有鱗目」のなかまで、有鱗目のうちヘビなどをのぞいたものをまとめてトカゲと呼びます。体はケラチンのうろこでおおわれ、肺で呼吸します。カエルやイモリなどの両生類は、皮ふをおおうようなうろこがなく、多くは水の中に卵を産み、子どもはえらで呼吸する点がちがいます。名前の似たヤモリはトカゲのなかま(爬虫類)、イモリは両生類です。
- トカゲのしっぽはなぜ切れる? また生えてくる?
- 敵にしっぽをつかまれたときに、しっぽを切りすてて逃げるためです(自切)。多くの種では、しっぽの骨に切れやすい節目があります。切れたしっぽはしばらく動いて敵の注意をひきつけます。しっぽは数週間かけて生えてきますが、再生したしっぽの中には骨がなく、軟骨でささえられています。色や長さも元とはちがうことが多くなります。しっぽには脂肪がたくわえられているので、切ると体には負担になります。
- トカゲとカナヘビ、ヤモリのちがいは?
- どれもトカゲのなかまです。ニホントカゲはトカゲ科で、子どもは黒っぽい体に縦じまと青いしっぽをもちます。ニホンカナヘビはカナヘビ科で、うろこにつやがなくざらざらしていて、しっぽがとても長いのが特徴です。ニホンヤモリはヤモリ科で、体が平たく、夜に活動します。指の裏のひだで、ガラスにもはりつけます。
- トカゲは何を食べる?
- 多くのトカゲは肉食で、昆虫などの小さな虫を食べます。野生のニホントカゲは昆虫やミミズ、クモ、ときには果物を、ニホンカナヘビやニホンヤモリは昆虫やクモ、ワラジムシなどを食べます。ニホンカナヘビは、基本的には生きた虫しか食べないとされます。イグアナのなかまなど、植物をおもな食べ物にするトカゲは、全体の種の2%ほどしかいません。
- トカゲの寿命は? 何年生きる?
- 種によってちがいます。ニホンカナヘビは10年くらい生きるとされますが、多くは2〜3年ほどです。ヒョウモントカゲモドキは野生で平均4.9年、飼育下では20年以上生きることがあります。コモドオオトカゲは30年ほど生きると推定されています。マダガスカルのラボードカメレオンには、卵からかえって4〜5か月で一生を終える地域の集団が知られています(もっと長く生きるものもいます)。
- トカゲはどこにいる?
- トカゲは南極大陸をのぞく世界中にすんでいます。日本では、ニホントカゲ(東日本ではヒガシニホントカゲ)は日当たりのよい草地や斜面、石垣のような石の多い場所に、ニホンカナヘビは草地や茂み、民家の庭などに、ニホンヤモリは民家やそのまわりにすんでいます。南西諸島には、その地域ならではのトカゲもいます。
- トカゲは冬眠する? 夜はどこで寝る?
- 本州などのトカゲは冬眠します。ニホントカゲは日当たりのよい斜面の土の中や石垣、ニホンカナヘビは日当たりのよい斜面の土の中、ニホンヤモリは壁のすき間や縁の下などで冬をこします。ニホンカナヘビは、夜は茂みや葉の上で眠ります。夜に活動するニホンヤモリは、反対に昼間に壁のすき間などで休みます。
- トカゲはなぜ舌を出すの?
- まわりのにおいを集めるためです。オオトカゲのなかまなどは、先が2つに分かれた舌をたえず出し入れして、空気中のにおいの粒を舌の先でとらえ、口の中にある「鋤鼻器(じょびき)」という器官に運んで調べます。ヤモリには、まばたきができないかわりに、舌で目をなめてきれいにするものもいます。
ナゾロジーで読む35本
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- 01 頭が2つある「双頭ヤモリ」が誕生、生後1カ月も順調に
- 02 9900万年前の琥珀から「新種のヤモリ」を発見、ミャンマー
- 03 くしゃみで鼻から「塩」を出すトカゲ、目的は何?
- 04 毎年数カ月間「絶滅」する不思議な生物『ラボードカメレオン』
- 05 【ヨルトカゲ】メキシコにいたのに隕石衝突を生き延びていたと判明
- 06 なぜ2本足で走るトカゲがいるのか?
- 07 【史上最大の冒険】イグアナはかつて「8000キロの海を渡っていた」と判明!
- 08 猛毒ドクトカゲの「よだれ」が現代医療に役立つワケ
- 09 【再生能力の限界】トカゲは何回「切れた尻尾」を再生できるのか?
- 10 鼻ちょうちんを酸素ボンベにして20分潜水できるトカゲ!
- 11 コモドドラゴンの牙は「鉄コーティング」で殺傷能力をUPしていた!
- 12 まるでプレデターのように口が裂ける驚きの「砂漠トカゲ」
- 13 完全に再生されないトカゲのしっぽを骨まで完全再生させることに成功!
- 14 夜行性ヤモリが「暗闇でも色が見分けられる」メカニズムを解明
- 15 わずか2センチ!「世界最小の新種カメレオン」を発見
- 16 トカゲ→ヘビ→トカゲ? 自在に手足を生やす「トカゲ」の再進化の理由が明らかに
- 17 寒すぎて”樹上から落下するトカゲ”が続出! 「1〜4℃の低温」に耐えられるよう順応していた可能性(アメリカ)
- 18 トカゲの凍結精子はカフェインで活性化する!? 「カフェインが爬虫類の保護に役立つ」
- 19 「便秘」でパンパンに膨れ上がったトカゲを発見。原因は?
- 20 「どっちに進化するか迷ってるのかも」卵生と胎生が同時にできる地球上で唯一のトカゲ
- 21 『ホビット』の巨竜の子孫?南アで「スマウグ・トカゲ」の新種が発見される
- 22 遺伝子編集による「アルビノトカゲ」の作成に世界初の成功
- 23 なんやこいつ!?頭から泡を出して16分間潜水する奇妙なトカゲ
- 24 トカゲも「夢」を見ていることが判明。恐竜も夢を見ていたかも?
- 25 古代のトカゲに「第4の眼」を発見。脊椎動物では極めてまれ
- 26 「女体化」待ったなし。温かいとメスに性転換するトカゲの未来がヤバイ
- 27 ゴリラたちが夢中で「カメレオン」に魅入る映像を撮影【映像あり】
- 28 111歳で初めて父親になった驚異のムカシトカゲ「ヘンリー」、現在は推定130歳
- 29 ヘビとトカゲの融合体? 1億6000万年前の謎の古生物を発見
- 30 ヘビはトカゲの3倍のスピードで超速進化を続けていた!
- 31 砂漠で生きる奇妙な生き物5選
- 32 一位は昭和レトロな生き物「再生能力をもつ生物TOP10」
- 33 100年生きるムカシトカゲは「ミトコンドリア遺伝子を2つもつ」唯一無二の生き物だった!
- 34 砂漠の「昼夜の気温差」が激しいのはなぜ? 動植物の涙ぐましい生きる工夫
- 35 ウサギはうんちを食べ、クマノミは性別を変える!?あなたの知らない「トンデモ習性」を持つ動物10選
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同じ有鱗目
同じ爬虫類
参考文献
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- Wikipedia「Tuatara」(英語版)
- Wikidata「トカゲ Lacertilia」(Q15879)
ありがとうございます。編集部で確かめます。
表紙の写真: harum.koh(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












