水辺の草地に、長い尾を曲げて腹ばいになっている、黒っぽいナイルワニの全身 No.0021

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ワニ

Crocodylia

今生きている動物で、鳥にいちばん近い爬虫類。
恐竜の時代から、水辺で待ちぶせを続けてきた。

ナゾロジーの記事
34本
全長(種によるちがい。6mをこえる個体も)
1〜6m
寿命
35〜75年

ワニは、熱帯の川や沼にすむ肉食の爬虫類のなかま(ワニ目)です。アリゲーター科・クロコダイル科・ガビアル科に分かれ、今生きている動物では鳥にいちばん近い親戚です。日本に野生のワニはいませんが、大昔にはマチカネワニがすんでいました。

図鑑データ

分類
爬虫類 › ワニ目(アリゲーター科・クロコダイル科・ガビアル科)
学名
Crocodylia(Crocodilia とも書く)
英名
crocodilian(クロコダイルのなかまは crocodile、アリゲーターのなかまは alligator)
漢字
鰐(鱷)
種の数
IUCN のレッドリストでは26種
大きさ
小さい種は全長1〜1.5mほど(コビトカイマンなど)。大きいイリエワニでは、全長6m・体重1,000kgをこえる個体もいる
すみか
南北アメリカ・アフリカ・アジア・オセアニアの熱帯の川・湖・沼。河口や海に出る種もいる
日本では
野生ではすんでいない。30万〜50万年前ごろにはマチカネワニがいた
食べもの
魚・貝・甲殻類・昆虫・鳥・哺乳類など。果物を食べることもある
繁殖
1回に産む卵の数は種によってちがい、数十個ほど(90個をこえることもある)。巣の温度で子の性別が決まる。母親が子を守る
寿命
35〜75年ほど
保全状況
26種のうち11種が絶滅のおそれ(IUCN)。すべての種がワシントン条約の対象

ワニとは(何類? 何種類いる?)

ワニは、川や沼などの水辺でくらす肉食の爬虫類です。分類では「ワニ目(もく)」というグループにまとめられ、アリゲーター、カイマン、クロコダイル、ガビアルなどをあわせて「ワニのなかま」と呼びます。

カエルやイモリのような両生類ではなく、ヘビやトカゲ、カメと同じ爬虫類です。体はうろこでおおわれ、肺で呼吸し、かたい殻のある卵を陸の巣に産みます。

見た目はトカゲに似ていますが、今生きている動物の中でワニにいちばん近いのは、じつは鳥です。ワニと鳥は、恐竜や翼竜もふくむ「主竜類(しゅりゅうるい)」というグループで、今も生き残っているのはこの2つのなかまだけです。4つの部屋に分かれた心臓をもつことや、肺の中を空気が一方向に流れることも、鳥と共通しています。

アリゲーターとクロコダイルのちがい

今生きているワニは、ふつう次の3つの科に分けられます。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストには26種がのっています(種の分け方には、研究者によって少しちがいがあります)。

  • アリゲーター科:アメリカアリゲーター(ミシシッピワニ)、ヨウスコウアリゲーター、メガネカイマン、クロカイマンなど。口先は幅の広いU字形で、口を閉じると、ふつうは上あごの歯だけが見えます。
  • クロコダイル科:イリエワニ、ナイルワニ、アメリカワニ、オーストラリアワニ(ジョンストンワニ)など。口先はやや細いV字形が多く、口を閉じても下あごの歯が外から見えます。
  • ガビアル科:インドガビアルとマレーガビアル。口先がとても細長いのが特徴です。
川岸の土の上で、頭を上げて日光浴をする灰色がかったメガネカイマン
アリゲーター科のメガネカイマン写真: Bernard Gagnon(CC0) / Wikimedia Commons

DNAを調べた研究から、細長い口先のガビアルのなかまは、アリゲーターよりもクロコダイルに近いことが分かっています。また、クロコダイルとアリゲーターのすむ範囲が重なっているのは、アメリカのフロリダだけとされています。

インドガビアルのオスは、おとなになると口先の先端に、こぶのようなふくらみができます。このこぶが、土でできたつぼ「ガラ(ghara)」に似ていることが、「ガビアル(gharial)」という名前の由来です。

川の浅瀬の砂の上に並んで横たわる、口先がとても細長い2頭のインドガビアル
口先がとても細長いインドガビアル写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

名前に「ワニ」とつく生き物でも、ワニのなかまではないものがいます。たとえばワニガメは、カミツキガメ科のカメです。

大きさと体のつくり

大きさは、種によって大きくちがいます。小さなコビトカイマンやコビトワニのなかまは、全長1〜1.5mほどです。大きなイリエワニやナイルワニは、全長6m、体重1,000kgに達することがあり、イリエワニは今生きている爬虫類の中でいちばん大きな種とされます。ワニのなかまは、オスがメスよりずっと大きくなる傾向があります。

体は、平たい頭と長い口先、太い胴、左右に平たい長い尾をもちます。目と耳と鼻の穴が頭の上側にならんでいるので、体のほとんどを水にしずめたまま、まわりを見たり、音を聞いたり、息をしたりできます。

静かな水面から、目と鼻先と頭の上側だけを出しているアメリカアリゲーター
目と鼻だけを水から出すアメリカアリゲーター写真: Judy Gallagher(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons
  • うろこ:背中は、重ならずにならんだかたいうろこ(鱗板)でおおわれ、その多くには「骨板(こつばん)」という骨の板が入っていて、よろいのようになっています。うろこには血管が通っていて、体温を調節するときに、熱を吸収したり逃がしたりするのに役立っているのかもしれません。
  • 色:体の色は、種や個体によって、オリーブ色、茶色、灰色、黒、緑がかった色などさまざまです。たとえばアメリカアリゲーターのおとなの背中は、オリーブ色・茶色・灰色・黒のいずれかで、イリエワニのおとなは、くすんだ緑がかった色をしています。クロコダイル属のワニは、皮ふの色を暗くしたり明るくしたりできます。
  • 歯:円すい形の歯がならびます。数は種によってちがい、80本ほどの種が多いですが、インドガビアルでは100本をこえます。それぞれの歯は、一生のあいだに最大50回ほど生えかわります。哺乳類のように歯が「歯槽(しそう)」というあごの骨のくぼみに埋まっているのは、いま生きている動物では、哺乳類のほかにはワニのなかまだけです。歯はおもにえものをつかむためのもので、哺乳類のように食べものをかんで細かくすることはしません(かたい貝をかみくだく種もいます)。
  • かむ力:かむ力はとても強く、イリエワニでは16,414N(ニュートン)という値が測られています。一方で、口を開ける筋肉は閉じる筋肉よりずっと弱く、人の手でも口を閉じたまま押さえておけるほどです。
地面にあごをのせたワニの頭の横顔。閉じた口のふちから、上と下の歯がのぞいている
口を閉じても歯が見えるワニ(クロコダイル)写真: Nireekshit(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

前足には、水かきがほとんどない指が5本あり、後ろ足の指には水かきがあります。肋骨(ろっこつ)の一部はやわらかい軟骨でできていて、水にもぐるときに胸がつぶれるようになっています。

博物館の展示ケースの中に置かれた、長い口と長い尾をもつワニの全身骨格
ナイルワニの骨格写真: Paul Williams(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

脳の大きさと頭のよさ

ワニの脳は、哺乳類よりずっと小さく、イリエワニでは脳の重さが体重の0.05%ほどしかないこともあります。2017年の研究では、ワニの頭の骨の中の、脳が入るすき間を調べました。すると、大きなワニでは、脳がすき間をすっかり満たしているわけではなく、部分によっては、すき間の半分にも満たないことが分かりました。

それでもワニは、鳥以外の爬虫類の中で、もっとも複雑な行動を見せるなかまの一つです。何頭かで協力して、えものを追いこむ狩りも観察されています。若いワニが物で遊んだり、なかまとじゃれ合ったりする「遊び」も知られています。アメリカアリゲーターなどが頭に小枝をのせて、巣の材料を探す鳥をおびきよせているという報告もありますが、本当に「わな」として使っているのかには、反対の意見もあります。

2023年の研究では、ナイルワニに、ヒト、チンパンジー、ボノボの赤ちゃんの泣き声を聞かせる実験をしました。するとワニは泣き声のほうに引きよせられ、苦しさの度合いが強い声ほど強く反応しました。ワニが手がかりにしていた声の特徴は、人が「苦しそう」と感じるときの手がかりとはちがっていました。

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どこにいる?(日本にもいる?)

ワニのなかまは、おもに南北アメリカ、アフリカ、アジア、オセアニアの暖かい熱帯の地域にすんでいます。多くは川や湖、沼などの淡水にすみますが、河口やマングローブの林のような塩分のある場所にすむ種もいて、イリエワニやアメリカワニは海に泳ぎ出すこともあります。ほとんどが低い土地にすみ、標高1,000mより高い場所ではくらしていないようです。

熱帯の外にすむ大きな例外は、アメリカ南東部のアメリカアリゲーターと、中国の長江(揚子江)にすむヨウスコウアリゲーターです。もっとも広い範囲にすむのはイリエワニで、インドの東部からニューギニア、オーストラリア北部まで分布しています。

にごった水の岸辺で、体を半分水につけて横たわるイリエワニ
川岸で日光浴をするイリエワニ写真: Fabian Roudra Baroi(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

日本にはいる? どこで見られる?

今の日本には、野生のワニのすむ場所はありません。ただ、イリエワニは海流に乗って海を移動することがあり、奄美大島や西表島、八丈島などで見つかった例があります。古い記録では、1744年に硫黄島の沖、1800年に奄美大島の沖、1932年に富山湾で、イリエワニが見つかっています。

日本でワニを見たいときは、動物園や水族館のほか、ワニを中心に展示する施設もあります。たとえば静岡県の熱川バナナワニ園は、温泉の熱を使ってワニを飼育していて、17種(雑種をふくむ)・約140頭のワニがいます。

大昔の日本には、野生のワニがすんでいました。そのことは、大阪で見つかった「マチカネワニ」の化石から分かっています(あとの「ワニの歴史」で紹介します)。

何を食べる?(狩りとデスロール)

ワニは、ほとんど肉だけを食べる肉食の動物です。何を食べるかは、口先の形と歯によって変わります。

  • 細長い口先:インドガビアルやオーストラリアワニは、魚や昆虫、エビ・カニなどの甲殻類を、すばやくくわえてとらえるのが得意です。
  • とても幅の広い口先:ヨウスコウアリゲーターやクチビロカイマンは、丸い歯で、かたい殻のある貝をかみくだきます。
  • 中くらいの口先:イリエワニやアメリカアリゲーターは、昆虫などの無脊椎動物、魚、両生類、爬虫類、鳥、哺乳類と、手に入るものをなんでも食べます。
赤っぽい岩かげの平らな岩の上で、口先の細長いワニが全身をのばして休んでいる
細長い口先のオーストラリアワニ写真: ciamabue(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

肉食ですが、果物を食べるところも、いくつかの種で観察されています。食べた果物の種を、ふんといっしょに別の場所へ運ぶ役割をしている可能性もあります。

狩りは、おもに「待ちぶせ」です。水ぎわでじっと身をひそめ、近づいた陸の動物をとらえて水の中に引きこみ、おぼれさせます。魚を食べる種は、口を横にふって魚をはさみとり、水から飛び上がって鳥やコウモリをとらえることもあります。

デスロール(死の回転)

ワニは、哺乳類のようにえものをかんで細かくすることはしません。飲みこめない大きなえものは、あごでしっかりくわえたまま、体ごとぐるぐる回転して、肉を引きちぎります。この動きは「デスロール」と呼ばれます。何頭かで1頭のえものを食べるときは、1頭がえものを押さえ、別の1頭が回転して肉を引きちぎることもあります。

ちぎった肉は、かまずに丸のみにします。ワニの胃はとても強い酸性です。胃の中から、のみこんだ石(胃石)が見つかることもあり、その役目にはいくつかの説があります。

ワニは、体がエネルギーを使う速さ(代謝)がとても低く、少ない食べものでも生きていけます。たくわえた脂肪で長く絶食することができ、生まれたばかりの子どもでも、58日間なにも食べずに生きのびたことがあります(そのあいだに体重の23%が減りました)。

共食いはする?

ワニのなかまで共食いがどのくらい起きているのかは、よく分かっていません。おとなが自分の子どもを食べることはふつうありませんが、若いワニがもっと小さな子どもを食べたり、おとなが若いワニを食べたりする証拠はあります。ナイルワニでは、繁殖の季節にオスどうしが争い、相手を殺してしまうこともあります。

なかまどうしの争いで、大きな傷を負うこともあります。それでもワニの皮ふは丈夫で、なかまにかまれても耐えられるほどです。

ワニの天敵は?

卵や生まれたばかりの子どもは、とても多くが死んでしまいます。巣は哺乳類や爬虫類に荒らされ、子どもは魚や鳥にもおそわれます。生まれたばかりの子どもは死ぬ割合が高く、大きくなるにつれて生き残りやすくなります。

大きくなると天敵はぐっと少なくなりますが、大型のネコのなかまやヘビに食べられることもあります。ゾウやカバが、身を守るためにワニを殺すこともあります。アメリカのフロリダでは、外来種のビルマニシキヘビが、かなり大きなアメリカアリゲーターを食べたことも観察されています。

オーストラリアでは、外来種の毒ガエル「オオヒキガエル」を食べて死ぬワニも問題になっています。熱帯の地域では、オーストラリアワニの一部の集団が70%以上も減りました。2024年に発表された研究では、毒をぬき、食べると気分が悪くなる薬を入れたヒキガエルをえさとしてまいたところ、野生のワニはヒキガエルのえさをさけるようになり、死ぬワニを減らすことができました。

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水と陸のくらし(息・速さ・口を開ける理由)

ワニは、水の中と陸の上の両方を使ってくらす動物です。水の中は、えものを待ちぶせたり、体温を調節したりする場所です。陸の上は、日光浴や巣づくり、暑さや寒さをさけるために使われます。

息はどうしている?(肺呼吸)

ワニは、魚のようなえらではなく、肺で空気を吸って呼吸します。2010年と2013年に発表された研究から、ワニの肺の中では、鳥と同じように、空気が一方向にぐるりと流れていることが分かりました。

もぐるときは鼻の穴をぴったり閉じ、のどの奥にある弁で気管と食道にふたをします。そのため、水の中で口を開けても、おぼれることはありません。ふつうは長くても15分ほどでうき上がりますが、条件がよければ、2時間ほど息を止めていられることもあります。もぐっているあいだ、心臓は1分間に1〜2回しか打たないことがあります。

肺の位置を、体の前や後ろへ動かすこともできます。こうして、水音を立てずに浮いたりしずんだりして、えものに気づかれずに近づけます。

陸ではどのくらい速い?

ワニは陸では動きがおそいと思われがちですが、短いあいだなら速く走れます。種によっては、時速12〜14kmほどで短い距離を走ることができます。オーストラリアワニのような小さめの種は、後ろ足でけって体を前に投げ出す「ギャロップ」で走ることもあります。

多くのワニは、ふだん陸を歩くとき、おなかを地面から持ち上げ、足を体の下にのばして歩きます(ハイウォーク)。インドガビアルのおとなは、この歩き方ができません。トカゲのように足を横に広げてはう歩き方とは、だいぶちがいます。岸辺のない場所では、木に登って日光浴をする種も4種知られています。

泳ぐときは、手足を体にぴったりつけ、筋肉の多い尾を左右にくねらせて進みます。

なぜ口を開けている? なぜじっとしている?

ワニは、体温を自分で一定に保てない「変温動物」です。体温は、おもに日光浴と、水と陸を行き来することで調節します。陸で口を大きく開けているのは、口の中から水分を蒸発させて、体を冷やすためです。こうしてワニの体温は、ふつう25〜35℃のあいだ、多くは30〜33℃に保たれています。

水辺の岩の上で、するどい歯の並ぶ口を大きく開けて休むワニ
口を開けて体を冷やすワニ写真: Goutham89(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ワニが長い時間じっとしているのは、日光浴で体温を調節していたり、水ぎわでえものを待ちぶせしていたりするためです。代謝がとても低いので、エネルギーをあまり使わずにくらすことができます。

冬はどうしている?(冬眠)

アメリカアリゲーターとヨウスコウアリゲーターは、冬に霜がおりるような地域にもすんでいます。寒いときは、水の深い、冷えにくい所に尾を置き、鼻先だけを水面から出してじっとしています。水面がこおると、息をするための穴を氷にあけておき、鼻先が氷にとじこめられることもあります。

これは「ブルメーション」と呼ばれる、冬眠に近い状態です。アメリカアリゲーターは、この状態のまま何日もすごすことができます。野生のアメリカアリゲーターでは、体の中の温度が5℃ほどまで下がることがありますが、息さえできれば、暖かくなったときに問題なく動き出します。

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反対に、西アフリカのモーリタニアの砂漠にすむセベクワニ(ニシアフリカワニ)は、いちばん乾く時期に、地下や岩かげにもぐって「夏眠」をします。

鳴き声と子育て(寿命は?)

ワニは、鳥以外の爬虫類の中で、いちばんよく鳴くなかまです。ほえる、うなる、シューッと息をはく、子どもが高い声で鳴くなど、いろいろな声を出します。とくにアリゲーターやカイマンのなかまはにぎやかで、クロコダイルのなかまには、ほとんど鳴かない種もいます。

子どもは、卵の中にいるうちから、音でなかまと合図をしています。この合図は、同じ巣の子どもがいっせいにかえるのに役立っているのかもしれません。卵からかえった子どもの鳴き声には、親だけでなく、血のつながらないおとなもすぐに反応します。

アメリカアリゲーターのオスは、水中で体をふるわせ、とても低い音(超低周波)を出して、メスをよんだり、ライバルをおどしたりします。2015年の研究では、ヘリウムと酸素をまぜた気体をヨウスコウアリゲーターのメスに吸わせて鳴かせる実験から、ワニの声にも、のどや口の中でひびいてできる「フォルマント」という特徴があることを確かめました。フォルマントは、鳥や哺乳類では体の大きさを伝える手がかりになっていて、ワニでも同じはたらきをしているのかもしれません。

インドガビアルのオスの口先のこぶ(ガラ)は、音をひびかせるのに役立っているのかもしれません。2021年の研究では、インドガビアルの細長い鼻の中を調べ、鼻の仕切り(鼻中隔)が大きく曲がって空気が通りにくくなっていた、1頭のメスの例を報告しています。

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繁殖の季節になると、強いオスはなわばりを守り、その中の何頭ものメスと交尾しようとします。オスとメスは、体をこすり合わせたり、まわりを泳いだりして求愛し、交尾はふつう水の中で行われます。

メスは、種によって、地面に穴をほるか、草や落ち葉、砂、土を積み上げて塚のような巣をつくり、卵を産みます。卵の数は種によってちがい、数十個ほどで、90個をこえることもあります。卵がかえるまでには、2〜3か月ほどかかります。

子どもがオスになるかメスになるかは、卵がかえるまでの巣の温度で決まります。たとえばアメリカアリゲーター(ミシシッピワニ)では、33〜34℃前後だとすべてオスに、30℃や35℃付近ではほとんどメスになるとされます。ワニには、性別を決める染色体(性染色体)がありません。

爬虫類としてはめずらしく、ワニは子育てをします。多くの種では、母親は、巣の中の子どもの鳴き声を聞くと巣をほり返し、子どもを口にくわえて水辺まで運びます。生まれた子どもたちは、母親のあとについて行動します。アメリカアリゲーターの子どもは1〜2年ほどおとなといっしょにすごしますが、イリエワニやナイルワニの子どもは、数か月で独り立ちします。

マングローブの根がのびる泥の上で、黒いしま模様の小さなワニの子どもが休んでいる
イリエワニの子ども写真: Richard.Fisher(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

2023年には、アメリカワニで、オスと交わらずにメスだけで子ができる「単為生殖(たんいせいしょく)」が、ワニではじめて確かめられました。単為生殖は、鳥やヘビ、トカゲ、サメ・エイのなかまでは知られていましたが、ワニでも起きることが分かったのです。

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ワニがおとなになるのは、年れいではなく、体がある大きさに育ったときです。イリエワニでは、メスは全長2.2〜2.5m、オスは3mほどでおとなになります。オーストラリアワニは、全長1.4mでおとなになるまでに10年かかります。

寿命は?

ワニの寿命は、35〜75年ほどとされます。たとえばアメリカアリゲーターは、ふつう50歳くらいまで生き、70歳をこえる可能性もあります。ワニの年れいは、骨にできる木の年輪のような成長線から調べることができます。

ワニの歴史(何年前から? なぜ絶滅しなかった?)

今のワニのなかま(ワニ目)は、恐竜がまだ生きていた白亜紀の後期には現れていました(はっきりした時期には議論があります)。さらにさかのぼると、ワニにつながる大きなグループ「偽鰐類(ぎがくるい)」は、約2億5000万年前の三畳紀の前期に現れ、恐竜の時代(中生代)にさまざまななかまに分かれました。

三畳紀の後期に現れた「ワニ形類(ワニ形上目)」のうち、今のワニにつながる初期のなかまは、小さく細身で足の長い動物でした。2026年に新しく名づけられたイギリスの三畳紀後期のガラハドスクスも、体がとても細く、足をまっすぐ体の下にのばして陸を走る、四足歩行の動物だったと考えられています。

恐竜の時代のワニのなかまは、今よりずっといろいろな姿をしていました。すばやく動いて虫を食べるもの、魚を専門に食べるもの、海でくらすもの、陸の上の肉食動物、植物を食べるものまでいました。韓国の白亜紀前期の地層からは、全長が最大3mほどのワニ形類が、後ろ足だけで歩いたとみられる足あとも見つかっています(2020年の研究)。

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ワニ形類は、三畳紀の終わりと白亜紀の終わりの、2回の大量絶滅を生きのびてきました。白亜紀の終わりの大量絶滅では、鳥のなかま以外の恐竜や、首長竜などが姿を消しましたが、なぜワニのなかまが生き残れたのかについては、はっきりした答えがまだ出ていません。今のワニにつながるなかまのほかにも、陸でくらすセベクスのなかまや、海でくらすディロサウルスのなかまが、この大量絶滅を生きのびました。

2025年の研究では、大昔のワニ形類の頭の形から、何を食べていたかを調べました。その結果、大量絶滅を生きのびたのは、いろいろなものを食べられる「なんでも屋」のなかまだったと考えられ、白亜紀の終わりを乗りこえたのは、水辺でくらす「なんでも屋」でした。研究者は、食べものの好みのはばの広さが、ワニのなかまが長く栄えてきた理由の一つだと考えています。

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「生きた化石」ではない?

ワニは「恐竜の時代から姿が変わらない生きた化石」と言われることがあります。けれども研究からは、恐竜の時代のワニのなかまの頭の形は、今よりずっとバラエティに富んでいたことが分かっています。2021年の研究では、ワニのなかまの体の大きさは、あまり変わらない時期と、大きく変わる時期をくり返しながら進化してきたことが示されました。気候が暖かい時期ほど、進化が速く、体が大きくなる傾向がありました。

とても大きなワニのなかまもいました。中新世のカイマンのなかまのプルサウルスは、全長が10mをこえたとする推定もあります。一方、太平洋の島々で完全に陸の上でくらしていたメコスクスは、人が島にやってきたあと、約3,000年前に絶滅しました。

日本にもいたワニ(マチカネワニ)

1964年、大阪府豊中市の大阪大学のキャンパスの工事現場で、ほぼ完全なワニの骨格の化石が見つかり、翌年の1965年に「マチカネワニ」と名づけられました。これは、日本で初めての確かなワニの化石の発見でした。

マチカネワニは、30万〜50万年前ごろの日本にいた、全長約7mの大きなワニです(2020年には、全長6.3〜7.3mと推定されました)。今のマレーガビアルに近いなかまとされています。化石には、骨折やかまれた傷がなおったあとが残っていて、なかまとの争いで負った傷かもしれないと考えられています。

本物の化石は大阪大学総合学術博物館に展示されていて、大阪市立自然史博物館などでは複製の骨格を見ることができます。

博物館の展示台の上に置かれた、長い口をもつ大きなワニの全身骨格。うしろには大型の哺乳類の骨格も並ぶ
マチカネワニの骨格(複製)写真: 大阪市立自然史博物館(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

人とのかかわり(人をおそう? 名前の由来)

ワニは、水の中や岸辺でとくに危険な捕食者です。人をおそうのは、なわばりや巣、子どもを守るためか、えものとしてねらうためです。大きなワニは、人と同じくらいか、それより大きな動物もえものにします。

人がおそわれた記録が多いのは、イリエワニ、ナイルワニ、ヌマワニ(インドワニ)、アメリカワニ、アメリカアリゲーター、クロカイマンなどです。2010〜2020年に、ナイルワニによる人への攻撃は1,000件をこえ、その70%近くで人が亡くなったと推定されています。同じ期間に、イリエワニでは1,300件以上(その半分近くで死者)、アメリカアリゲーターでは127件(死者が出たのは6件)が記録されています。

ナイルワニは、アフリカでもっとも危険な大型の捕食者と考えられています。広い地域に数多くすんでいて、水ぎわで漁をしたり、水浴びや洗たくをしたりする人に、気づかれずに近づくことができるからです。

皮や肉の利用と保護

人は、ワニを皮や肉、骨のためにとってきました。丈夫な皮はハンドバッグや靴、財布などに使われ、肉は鶏肉にたとえられ、淡白な味だといわれます。

1970年代のはじめまでに、200万枚をこえる野生のワニの皮が取引され、多くの地域でワニが激減しました。その後、ワシントン条約で取引が規制され、ワニを育てる養殖場が広まったことで、野生のワニの皮の違法な取引はほとんどなくなりました。今では、すべてのワニがワシントン条約の対象になっています。

それでも、IUCNのレッドリストでは、26種のうち11種が絶滅のおそれがあるとされています。ヨウスコウアリゲーター、フィリピンワニ、インドガビアルなどは、もっとも危険度の高い「深刻な危機(CR)」です。フィリピンワニは、2009年までに約100頭まで減りました。一方、アメリカアリゲーターは、1967年に絶滅危惧種に指定されたあと、保護によって数が回復し、1987年に指定が外されました。

名前の由来(漢字・英語)

「ワニ」は日本語の呼び名で、漢字では「鰐」(または「鱷」)と書きます。「鰐」は、「魚」に、音をあらわす「咢」を組み合わせた字です。古い中国語では、イリエワニを指す字でした。日本では、古い辞書『和名類聚抄』が「鰐」を「和邇(わに)」と読ませていますが、「わに」という言葉の由来には、いくつもの説があります。

昔の日本では、サメのことも「わに」と呼びました。今でも広島県の一部には「ワニ料理」という郷土料理がありますが、この「ワニ」はサメのことで、爬虫類のワニではありません。

英語では、クロコダイルのなかまを crocodile(クロコダイル)、アリゲーターのなかまを alligator(アリゲーター)と呼び、ワニのなかま全体は crocodilian(クロコダイリアン)といいます。crocodile は、トカゲとナイルワニの両方を意味したギリシャ語の krokodeilos から、alligator は、スペイン語の el lagarto(トカゲ)がなまったものとされます。

古代エジプトでは、ワニの頭をもつ神セベクがあがめられ、たくさんのワニがミイラにされました。

灰色の背景の前に置かれた、布で包まれた細長いワニの形のミイラ
古代エジプトのワニのミイラ写真: Museo Egizio(トリノ・エジプト博物館)(CC0) / Wikimedia Commons

「ワニの涙」とは

英語の「crocodile tears(ワニの涙)」は、うその涙を意味します。ワニがえものを食べながら涙を流す、という昔の言い伝えからきた言葉です。実際には、ワニが水から上がって体が乾くと、目を守る「瞬膜(しゅんまく)」の分泌腺から出る塩分をふくんだ液が、涙のように見えることがあります。2020年の研究では、クチビロカイマンをふくむ鳥や爬虫類の涙のナトリウムや塩化物などのバランスが、人の涙と似ていることが分かりました。

ナゾロジーでくわしくワニと人の涙は、ほぼ同じ成分だった!?ワニは2時間もまばたきしなくて大丈夫

よくある疑問

ワニは何類? 両生類なの?
ワニは爬虫類です。カエルやイモリのような両生類ではなく、ヘビやトカゲ、カメと同じなかまです。体はうろこでおおわれ、肺で呼吸し、かたい殻のある卵を産みます。分類では「ワニ目」にまとめられ、今生きている動物では、鳥にいちばん近いなかまです。
ワニは何種類いる? 何科があるの?
ふつう、アリゲーター科(アリゲーターとカイマン)、クロコダイル科、ガビアル科の3つの科に分けられ、IUCN のレッドリストには26種がのっています。口先が幅の広いU字形で、口を閉じると上の歯だけが見えるのがアリゲーターのなかま、口先がやや細いV字形で、下の歯も見えるのがクロコダイルのなかまです。
ワニはどこにいる? 日本にもいるの?
おもに南北アメリカ、アフリカ、アジア、オセアニアの熱帯の川や湖、沼にすんでいます。アメリカ南東部と中国の長江には、寒さにも強いアリゲーターがいます。今の日本には野生のワニのすむ場所はありませんが、海を移動してきたイリエワニが島で見つかった例はあります。日本では、動物園や水族館、ワニを中心に展示する施設などで見られます。
ワニは何を食べるの?
ほとんど肉を食べます。魚や貝、エビ・カニなどの水の生き物から、水辺に来た鳥や哺乳類まで、種や体の大きさによってさまざまです。食べものはかまずに丸のみにし、大きなえものは体を回転させる「デスロール」で引きちぎります。果物を食べることもあります。
ワニはなぜ口を開けているの?
体を冷やすためです。ワニは体温を外の熱で調節する変温動物で、陸で日光浴をしているとき、口を大きく開けて口の中から水分を蒸発させ、体を冷やします。
ワニはどのくらいの速さで走れる?
陸では、短い距離なら時速12〜14kmほどで走れる種がいます。小さめの種は、後ろ足で体を前に投げ出す「ギャロップ」で走ることもあります。多くの種は、ふだんは、おなかを地面から持ち上げて歩きます。
ワニの寿命は? 何年生きる?
35〜75年ほどとされます。たとえばアメリカアリゲーターは、ふつう50歳くらいまで生き、70歳をこえる可能性もあります。
ワニは英語で何という?
クロコダイルのなかまは crocodile(クロコダイル)、アリゲーターのなかまは alligator(アリゲーター)、インドガビアルは gharial(ガビアル)です。ワニのなかま全体は crocodilian(クロコダイリアン)と呼ばれます。

ナゾロジーで読む34本

  1. 01 大型哺乳類を食らう「怪物級のワニ」が太古の地球にいた
  2. 02 スリムすぎる「新種の古代ワニ」の化石を発見
  3. 03 恐竜以前にいた「ワニの祖先」の新種発見、アーマーをまとっていた
  4. 04 エジプトで8000万年前の「新種ワニの化石」を発見
  5. 05 ワニの男性器にはOFFモードがなく、常に「勃起」状態にある

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参考文献

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  6. Thévenet J ほか (2023) Crocodile perception of distress in hominid baby cries. Proceedings of the Royal Society B
  7. Ward-Fear G ほか (2024) Taste aversion training can educate free-ranging crocodiles against toxic invaders. Proceedings of the Royal Society B
  8. Reber SA ほか (2015) A Chinese alligator in heliox: formant frequencies in a crocodilian. Journal of Experimental Biology
  9. Bourke JM ほか (2021) Septal deviation in the nose of the longest faced crocodylian: A description of nasal anatomy and airflow in the Indian gharial (Gavialis gangeticus) with comments on acoustics. The Anatomical Record
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  12. Wikipedia「ワニ」(日本語版)
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  15. Wikipedia「American alligator」(英語版)
  16. Wikipedia「Gharial」(英語版)
  17. Wikipedia「イリエワニ」(日本語版)
  18. Wikipedia「マチカネワニ」(日本語版)
  19. Wikipedia「熱川バナナワニ園」(日本語版)
  20. Wikipedia「ワニガメ」(日本語版)
  21. ウィクショナリー「鰐」(日本語版)
  22. Wikidata「ワニ目 Crocodilia」(Q25363)

表紙の写真: Charles J. Sharp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。