”最後の晩餐”となった恐竜も新種の可能性
ワニの化石は2010年、同州中西部にある白亜紀の地層であるウィントン層から出土しました。
尻尾や後脚などの部位はなかったものの、歯列を含むほぼ完全な頭蓋骨が回収されています。
分析の結果、本種は、白亜紀前期にあらわれた現代型ワニのグループ「正鰐類(せいがくるい、Eusuchia)」に属す、新属新種のワニと判明しました。
研究主任のマット・ホワイト(Matt White)氏は「本種は、ウィントン層から発見された2頭目のワニ類に相当する」と話します。
この恐竜時代のワニは現代の基準から見てもそれほど大きくはなく、成熟手前の個体だったとのこと。
驚くべきは、胃の中から、鳥脚類の幼体の一部消化された骨が見つかったことでした。
鳥脚類は、イグアノドンやパラサウロロフスに代表される草食恐竜のグループです。
背中の椎骨や仙骨(脊椎の下部)、尾骨、大腿骨など多くの部位が見つかっており、すべて1個体のものと見られます。
種の特定まではいたっておらず、ホワイト氏によると「新種の可能性もある」とのことです。
食べられていた恐竜の体格は推定体重1.0〜1.7kgで、体長は尻尾を含んで約2.5mほど。古代ワニが十分に食べられる大きさです。
現代のワニは何でも食べることで有名ですが、ジュラ紀から白亜紀にかけて、一部のワニは、小型〜中型の恐竜を捕食対象にしていたと考えられてきました。
しかし、ワニの化石中から恐竜を食べた証拠はほぼ見つかっていないため、今回のそれは貴重な資料となります。
マイクロCTスキャナーによる調査では、鳥脚類の大腿骨があきらかに強力なアゴの力で2つに折れており、他の骨にも歯の跡が見つかりました。
また、これが最後の晩餐であったことも特定されています。
ホワイト氏は、これを受けて、次のように説明します。
「コンフラクトサクス・サウロクトノスは恐竜を専門に食べていたわけではないものの、今回のように小さな恐竜は見逃さず捕食していたでしょう。
この発見は、恐竜が当時の生態系の中で、捕食者やスカベンジャー(腐肉食者)だけでなく、被食者としても重要な役割を果たしていたことを示します」
一方で、ワニがなぜ、恐竜を食したあとに死んでしまったのかはわかっていません。
また尻尾が見つかっていない点について、ホワイト氏は「尾はワニの最もおいしい部位であることから、より大きな恐竜によって食べられた可能性も高い」と述べています。
やはり恐竜時代は、食い食われるの非常に過酷な世界だったようです。