肋骨からできた甲羅を背負って、
2億年をこえて生きてきた。
- ナゾロジーの記事
- 39本
- なかま
- 約360種
- 長生きのゾウガメ(推定)
- 190歳以上
カメは、背骨と肋骨につながる甲羅をもつ爬虫類です。ウミガメ、リクガメ、川や池のカメ、スッポンなど約360種がいて、日本ではニホンイシガメやクサガメ、外来種のアカミミガメが見られます。150年をこえる長生きの記録もあります。
図鑑データ
- 分類
- 動物界 › 脊索動物門 › 爬虫綱 › カメ目
- 学名
- Testudines
- 英名
- turtle(タートル)。リクガメは tortoise(トータス)
- 漢字
- 亀
- 種の数
- 約360種(最近絶滅した種をふくむ)
- 大きさ
- いちばん小さいシモフリヒラセリクガメは甲長10cmまで、いちばん大きいオサガメは全長2.7m以上
- 体のつくり
- 背骨・肋骨とつながった甲羅。歯はなく、くちばしでかむ。首の骨は8個
- すみか
- ほとんどの大陸と一部の島、世界の海。川・池・海・砂漠・草原・森林
- 日本では
- ニホンイシガメ、クサガメ、スッポン、外来種のアカミミガメなど。海にはアカウミガメなど(発見例の少ない外来種を除き、陸・淡水・海を合わせて6科13種)
- 食べもの
- 多くは雑食。リクガメは植物、ウミガメは海藻・貝・カニ・クラゲなど種ごとにちがう
- 寿命
- アカミミガメは飼育下で20〜30年ほど。ゾウガメでは150年をこえる記録がある
- 増え方
- 卵生。ふつう陸に穴を掘って産卵。多くの種で卵の温度によって性別が決まる
カメとは(何類? 爬虫類? 両生類?)
カメは、背中とおなかを甲羅でおおわれた爬虫類です。分類では「カメ目(Testudines)」というグループにまとめられ、海にすむウミガメ、陸だけでくらすリクガメ、川や池にすむ淡水のカメ、甲羅のやわらかいスッポンなどがふくまれます。最近絶滅したものもふくめて、約360種が知られています。
水の中でくらす種も多いのですが、カエルなどの両生類とはちがいます。カメは肺で空気を吸って呼吸し、体の多くはうろこでおおわれています。そして、海にすむウミガメもふくめて、カメはふつう陸に卵を産みます。両生類の多くは、殻のない卵を水の中に産み、子どもはえらで呼吸して水の中でくらします。
カメのなかまは、首を甲羅に引っこめるやり方で、大きく2つに分けられます。首を縦にS字に曲げて引っこめる「潜頸類(せんけいるい)」と、首を横に曲げてしまう「曲頸類(きょくけいるい)」です。その下には、ウミガメ科、オサガメ科、カミツキガメ科、ドロガメ科、ヌマガメ科、イシガメ科、リクガメ科、スッポン科、ヘビクビガメ科など、いくつもの科があります。日本のニホンイシガメやクサガメはイシガメ科、アカミミガメはヌマガメ科、スッポンはスッポン科です。
爬虫類の中でカメがどのなかまに近いのかは、長く議論が続いてきました。今では多くの遺伝子の研究から、カメはトカゲやヘビよりも、ワニや鳥のなかまに近いと考えられています。カメのなかまとワニ・鳥のなかまが分かれたのは、約2億5000万年前とされます。
ナゾロジーでくわしくカメは爬虫類よりも「鳥」に近い生物だった
甲羅と体のつくり(大きさ・特徴)
カメのいちばんの特徴は、甲羅です。甲羅は、背中側のドーム形の「背甲(はいこう)」と、おなか側の平らな「腹甲(ふくこう)」からなり、体の横でつながっています。おもに50〜60個の骨でできていて、表面は、髪の毛や爪と同じケラチンでできた板状のうろこ「甲板(こうばん)」でおおわれています。
甲羅は、体の外にかぶったよろいではありません。背中の甲羅は、背骨と肋骨(あばら骨)とつながっていて、体の一部です。カメの胚(卵の中で育つ子ども)を調べた2013年の研究では、背中の甲羅のおもな部分は、肋骨そのものが変化してできることが示されました。肩や腰の骨は、甲羅(肋骨)の内側にあります。肩や腰の骨が肋骨に囲まれているのは、脊椎動物ではカメだけです。

甲羅の形は、くらし方によってちがいます。陸でくらすリクガメの甲羅は高く盛り上がったドーム形で、大きな動物にふみつぶされにくいと考えられています。水の中でくらすカメの甲羅は平たく、水を切って進みやすい形です。スッポンのなかまやオサガメには、かたい甲板がありません。甲羅のでこぼこのおかげで、ひっくり返っても体をかたむけて起き上がれるリクガメもいます。
- 首:首はとてもよく曲がります。首の長さは種によってちがいますが、首の骨の数は、どのカメも8個です。ウミガメは、頭をほとんど甲羅に引っこめられません。
- 口:今のカメには歯がありません。かわりに、ケラチンでできたかたいくちばしでかみ切ります。肉を切る刃のようなくちばし、植物をかみ切るぎざぎざのくちばし、貝をくだく幅の広いくちばしなど、食べものに合わせた形があります。
- 目:色を見分けることができます。アカミミガメの網膜には、色を感じる細胞(錐体)が7種類もあります。
- 耳:耳の穴はなく、鼓膜はうろこでおおわれています。低い音をよく聞き取り、アカウミガメの実験では、100〜400ヘルツの音にいちばんよく反応しました。
大きさは、種によって大きくちがいます。今いるカメで最大のオサガメは、全長2.7mをこえ、体重は500kgをこえることがあります。いちばん小さいのは南アフリカのシモフリヒラセリクガメで、甲長(甲羅の長さ)は大きくても10cmほどです。日本の川や池にいるニホンイシガメは、大きなメスでも甲長21cmほどです。
陸の上のカメは、動きがゆっくりです。重い甲羅を背負っていることに加え、足が体の真下にまっすぐのびておらず、トカゲのように曲がってついているため、歩くのにはあまり向いていません。アメリカの砂漠にすむサバクゴファーガメの歩く速さは、時速0.22〜0.48kmほどです。一方、ウミガメは前足のひれを鳥のつばさのように動かして泳ぎ、時速30kmほどで泳ぐことができます。
なぜ甲羅があるの?(甲羅の進化)
カメのなかまは、約2億1000万年前の三畳紀の後期には、すでに現れていました。カメの祖先に近い動物の化石を見ると、甲羅が少しずつできていったようすが分かります。三畳紀の中ごろのパッポケリスには、まだ甲羅がなく、幅の広い肋骨をもっていました。中国で見つかった約2億2000万年前のオドントケリスは、おなか側の甲羅はできあがっていましたが、背中側の甲羅は不完全でした。三畳紀の後期のプロガノケリスでは、背中とおなかの甲羅がそろっていました。
甲羅は今、身を守るのに役立っていますが、はじめは別の役わりがあったという説もあります。2016年の研究では、南アフリカで見つかった約2億6000万年前のエウノトサウルスの化石を調べ、幅の広い肋骨は、前足で土を掘るときに体を安定させる土台だったと考えました。ただし、エウノトサウルスがカメの祖先に近いなかまかどうかには、異論もあります。
息のしかたと冬眠(肺呼吸? 何分もぐれる?)
カメは、肺で空気を吸って呼吸します。水の中でくらすカメも、ときどき水面に出て息つぎをしなければなりません。甲羅はふくらまないので、私たちのように胸を広げて息をすることはできません。そのかわり、おなかの筋肉で内臓を動かし、肺をふくらませたり、しぼませたりしています。
どのくらい長くもぐっていられるかは種によってちがい、1分から1時間ほどまでさまざまです。ウミガメはとくに長く、アオウミガメの1回のもぐる時間は平均16分ほどです。眠っているウミガメは、4〜7時間ほども海の中にもぐったままでいられます。地中海のアカウミガメでは、10時間以上もぐった記録があります。オサガメは、深さ1,200mをこえるところまでもぐることがあります。
お尻で呼吸するカメもいる
一部のカメは、水の中で「総排泄腔(そうはいせつこう)」からも酸素を取りこめます。総排泄腔は、ふんやおしっこ、卵の通り道が1つにまとまった体の中の部屋で、総排泄口という穴で体の外につながっています。その中には、指のような小さな突起がたくさん並んだ大きな袋があり、水にとけた酸素を吸収します。ハヤセガメのように、こうして酸素を取りこみ、息つぎのために水面に上がる回数を減らせるカメもいます。
ナゾロジーでくわしくカメは「お尻の穴」で呼吸できる!
冬眠
カメは、まわりの温度によって体温が変わる「変温動物」です。日本の川や池にすむニホンイシガメ、クサガメ、アカミミガメは、どれも冬になると冬眠します。ニホンイシガメは、水の中の穴や石の下、積もった落ち葉の中などで冬眠します。冬眠中のカメには、空気を吸わずに、総排泄腔で水から酸素を取りこんですごすものもいます。ブランディングガメのように、寒さに強く、水面が凍りついた水の中でも活動するカメもいます。
どこにいる? 日本のカメと見分け方
カメは、ほとんどの大陸と一部の島、そして世界の海の多くの場所にすんでいます。熱帯や温帯に多く、川や湖、池などの淡水、海、砂漠、草原、森林など、さまざまな場所でくらしています。海以外のカメの種類がとくに多いのは、南アメリカのアマゾン川の流域、アメリカのメキシコ湾にそそぐ川の流域、南アジアや東南アジアの一部です。
日本にいる野生のカメ
日本では、発見例の少ない外来種を除くと、6科13種のカメが知られています。川や池、水田などにすむのは、日本だけにすむニホンイシガメのほか、クサガメ、スッポン、そして外来種のアカミミガメなどです。ほかに、リュウキュウヤマガメ、セマルハコガメ、ミナミイシガメなどもいます。海にはアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイなどがすみ、アカウミガメは日本の砂浜で卵を産みます。遠州灘の海岸、和歌山県の南部、日南海岸、屋久島などは、年に100回以上の産卵がある、アカウミガメの大切な産卵地です。

一方で、もともと日本にいなかったカメも、野外でくらしています。北アメリカ原産のアカミミガメは、ペットとして飼われていたものが野外に放されるなどして広がり、今では北海道から沖縄まで、すべての都道府県で見られます。北アメリカなどにすむカミツキガメも、千葉県の印旛沼の水系などで野生化し、繁殖しています。クサガメも、江戸時代の中ごろより前の確かな記録がないことなどから、朝鮮半島から人が持ちこんだと考えられています。
川や池のカメの見分け方
- ニホンイシガメ:甲羅は茶色っぽく、後ろのふちが、のこぎりの歯のように少しぎざぎざしています(年をとると目立たなくなります)。頭は小さめで、黄色っぽい茶色をしています。
- クサガメ:甲羅の背中に、3本の筋(キール)が盛り上がっています。甲羅の後ろのふちはなめらかです。頭には、黄色や黄緑色の不規則なもようが入ります。年をとったオスは、全身が黒っぽくなり、もようが消えます。
- アカミミガメ:目の後ろに、赤い「耳」のように見える部分があります。ただし、黒っぽくなったおとなのオスなどでは、赤くないこともあります。子ガメは「ミドリガメ」と呼ばれます。
- スッポン:甲羅の表面がかたい甲板ではなく、やわらかくなっています。鼻と首が長く、水の中から鼻先だけを出して息ができます。



海を旅するウミガメ
ウミガメのなかまは、ウミガメ科の6種とオサガメ科の1種の、あわせて7種です。前足は大きなひれになっていて、メスが卵を産むとき以外は、ふつう陸に上がりません。
ウミガメは、何千kmもの長い旅をします。浜で生まれた子ガメは、海で何年も、あるいは何十年もかけて大きくなります。そして、おとなになると、生まれた場所の近くにもどってきて卵を産みます。どうやって浜にもどるのかはまだはっきりしませんが、地球の磁気(地磁気)を感じとって道を探していることを示す実験結果があります。日本の浜で生まれたアカウミガメは、メキシコのカリフォルニア半島の沖まで旅をし、大きくなるとまた日本の近くにもどってきます。
ウミガメの目の近くには、塩をこしだす特別な涙腺(るいせん)があります。体に入った余分な塩を、どろっとした涙として外に出しているのです。陸に上がったウミガメが「泣いている」ように見えるのは、このためです。クラゲを主食にするオサガメは、この涙腺がとくに大きくなっています。

ナゾロジーでくわしくオサガメが「1時間に8リットルの涙」を流さなければならない理由
陸だけでくらすリクガメ
リクガメ科のカメは、一生を陸の上でくらします。足は柱のように太く、ゾウのような足に短い指がついています。北アメリカの南部から南アメリカ、地中海のまわり、アジア、アフリカ、マダガスカルなどにすみ、オーストラリアなどにはいません。多くの種は、乾いた土地にすんでいます。リクガメは泳げませんが、何か月も食べものや真水がなくても生きのびられるため、海をただよって740km以上はなれた場所まで流れ着いたと考えられる例もあります。
リクガメのなかまには、ゾウガメのほか、マダガスカルのホウシャガメ、ギリシャリクガメ、ヘルマンリクガメ、アカアシガメなどがいます。今も生きている巨大なリクガメ(ゾウガメ)は、インド洋のアルダブラ環礁にすむアルダブラゾウガメと、ガラパゴス諸島にすむガラパゴスゾウガメのなかまです。アルダブラゾウガメは甲長120cmほど、ガラパゴスゾウガメには甲長1.2mをこえるものもいます。かつては、カナリア諸島やマルタ島、カリブ海の島々など、ほかの多くの島にもゾウガメがいました。


何を食べる?
多くのカメは、植物も動物も食べる雑食です。陸のカメは植物を、水のカメは動物を多く食べる傾向があります。すばやく動くのは苦手なので、植物や、貝・ミミズ・昆虫の幼虫のように動きのおそい動物をよく食べます。カミツキガメのなかまのように、魚、カエル、ほかのカメをふくむ爬虫類、鳥、哺乳類まで食べる種もいます。待ちぶせしてとらえるほか、死んだ動物も食べます。
子どものころは肉食で、大きくなると植物を多く食べるようになる種もたくさんいます。アカミミガメも、子ガメは動物を多く食べますが、成長すると植物を多く食べるようになります。
- リクガメ:草や葉、花、果物などを食べる草食です。ただし、ミミズや虫、死んだ動物を食べる種もいます。
- ウミガメ:アオウミガメはおもに海藻などの植物を、アカウミガメは貝やカニ、タコなどの動物を食べます。タイマイは海綿(カイメン)を、オサガメはクラゲをおもに食べます。
- 川や池のカメ:ニホンイシガメは、魚、カエル、昆虫、エビやカニ、貝、ミミズ、植物の葉や花、果実、藻などを食べます。畑に落ちたカキやトマトを食べることもあります。
- ワニガメ:舌にあるミミズのような突起で魚をさそい、口の中に入ってきたところを食べます。
カメが、ほかのカメを食べてしまうこともあります。ニホンイシガメは、ほかのカメが卵を産んでいる最中に、同じ種か別の種かにかかわらず、その卵を食べることがあります。アカウミガメの胃の中から、同じ種の子ガメが見つかった例もあります。
鳥をおそうカメも
セーシェルの島では、アルダブラゾウガメが、丸太の上でアジサシのヒナを追いつめてしとめ、食べるようすが撮影されました(2021年に報告)。研究者は、木に巣をつくるアジサシの集団と、ゾウガメがいっしょにすむこの島の条件が、ゾウガメによる鳥の狩りにつながったと考えています。アメリカのルイジアナ州では、アカミミガメが水の中から現れて、マガモのヒナをくわえて水中に引きこむようすが動画に記録されました。
ナゾロジーでくわしく実は肉食?ゾウガメがヒナを捕食する衝撃のシーンが報告される
カメのくらし(甲羅干し・におい・鳴き声・かしこさ)
甲羅干し(日光浴)と、重なり合うカメ
カメは変温動物なので、自分で体温を保つ力が弱く、まわりの温度で体温が変わります。池にすむ小さなカメは、水から出て日光を浴び、体を温めます。これが「甲羅干し」です。陸の小さなカメは、日なたと日かげを行き来して体温を調節します。
日光浴に向いた場所は、カメどうしで取り合いになることがあります。外来種のアカミミガメは、日光浴の場所や食べものをめぐって、在来のカメと競合しています。岩や流木の上で、カメが重なり合って甲羅干しをしていることもあります。

身の守り方と、においを出すカメ
危険を感じたカメは、逃げるか、じっと動かなくなるか、甲羅の中に頭や手足を引っこめます。川や池のカメは、危険を感じると水の中に逃げこみます。スッポンのなかまは、水にもぐって底にもぐりこむこともあります。それでも敵があきらめないと、かみついたり、総排泄腔から液を出したりします。
くさいにおいを出すカメもいます。クサガメは、足のつけ根に「臭腺(しゅうせん)」をもち、敵におそわれると悪臭を出します。漢字で「臭亀」と書くという説もあります。ただし、飼われているクサガメは、においを出さないことが多いといいます。
陸を歩いて移動する
水辺でくらすカメも、陸を歩いて移動することがあります。多くのカメは陸に卵を産むため、メスは産卵の場所を探して水からはなれます。カミツキガメは、陸を5kmも歩いて産卵場所へ向かうことがあります。ニホンイシガメやクサガメには、陸づたいに別の水場へ移るものもいます。道路など、水辺からはなれた場所でカメに出会うのは、こうした移動の途中のこともあります。
鳴き声と、かしこさ
カメは鳴かない動物だと思われがちですが、さまざまな音を出して、なかまとやりとりしています。リクガメは、求愛や交尾のときに大きな声を出すことがあります。淡水のカメやウミガメには、卵の中にいるときからおとなになるまで、短く低い声を出す種がいます。2022年の研究では、カメ、ムカシトカゲ、アシナシイモリ、ハイギョの4つのグループの53種の声を録音しました。そして、声でやりとりする能力の起源は、約4億700万年前までさかのぼるかもしれないと考えました。

カメは、ものを覚えることもできます。実験では、フロリダアカハラガメが新しい課題を覚え、少なくとも7.5か月後もその記憶を保っていました。ゾウガメも課題を覚えることができ、なかまといっしょに訓練すると、より早く覚えます。リクガメが、9年前に訓練されたことを覚えていたという報告もあります。カメは、目印や地図のような手がかりを使って、目的の場所までまっすぐ向かうこともできます。この道案内の力は、脳の「内側皮質」という部分の働きと関係があるとされます。
2025年には、アカアシガメ(リクガメの一種)を使った実験で、爬虫類にも「気分」があることを示す結果が報告されました。よい環境で飼われたカメは、えさがあるかどうか分からない場所のうち、えさをもらえると覚えた場所に近いところへは、すばやく近づく「楽観的」なようすを見せました。そして、楽観的なカメほど、見慣れないものへの不安も少なかったのです。
ナゾロジーでくわしく「爬虫類は何を考えているの?」カメの“気分”を測った世界初の実験
寿命と増え方(なぜ長生き?)
カメは、長生きな動物として知られています。確かな記録では、セーシェルからモーリシャスに運ばれたアルダブラゾウガメが、1918年に死ぬまで152年間飼育されました。イギリス領セントヘレナ島にいるセーシェルゾウガメの「ジョナサン」は、1832年ごろに生まれたと推定され、2026年の時点で190歳をこえています。今生きている陸の動物で、いちばん年上とされています。
ただし、野生のカメの多くは、そこまで長くは生きません。身近なアカミミガメの寿命は、飼育下で20〜30年ほどで、40年生きるものもいます。アカウミガメは、生まれてからおとなになるまでに13〜47年かかります。
カメが長生きなのは、年をとっても体がおとろえにくいからだと考えられています。動物園や水族館で飼われている52種のカメを調べた2022年の研究では、約75%の種で、年をとるにつれて死ぬ確率が上がる「老化」が、とてもゆっくりか、ほとんど見られませんでした。約80%の種で、老化の速さは今の人間よりもおそかったのです。同じ年に発表された野生の爬虫類と両生類の研究では、甲羅のように体を守るしくみが、老化の速さのちがいを説明する手がかりの一つになるとされました。おとなのカメが1年間に生きのびる割合は、99%に達することもあります。また、ガラパゴス諸島のゾウガメの1種で、最後の1匹だった「ロンサム・ジョージ」とアルダブラゾウガメのゲノム(全遺伝情報)からは、DNAの修復にかかわる遺伝子に、長生きと関係するかもしれないちがいが見つかっています。
ナゾロジーでくわしくなぜカメは長寿なのか? 極端に老化速度と死亡率が低いカメの謎
卵と性別
カメは、オスとメスが交尾をして体の中で受精し、卵を産んで増えます。交尾のとき、オスはメスの甲羅の上に乗ります。ニホンイシガメでは、オスがメスの顔の前で前足を振って求愛し、メスが受け入れると、オスがメスの上に乗って交尾します。
多くのカメは、陸の地面に穴を掘って卵を産みます。母親は、ふつう卵に土や砂をかぶせると、すぐに去ってしまいます。一度に産む卵の数は、種によって1個から100個以上までさまざまです。リクガメは淡水のカメにくらべて、少なくて大きな卵を産みます。
多くのカメでは、子どもの性別が、卵が育つときの温度で決まります。ウミガメでは、温度が高いとメスが、低いとオスが生まれます。クサガメの胚は、卵の中で動いて育ちやすい温度の場所を選び、自分の性別に影響をあたえることができる、という実験結果もあります。
アカウミガメは、日本では5〜8月ごろに砂浜に上陸し、深さ60cmほどの穴を掘って、1回に70〜150個の卵を産みます。卵は50〜80日でかえり、子ガメは、砂の表面の温度が下がったことで夜になったのを知り、砂の中から出て海へ向かいます。

卵や子ガメのうちは、多くの動物に食べられてしまいます。ウミガメはふつう一度に100個ほどの卵を産みますが、おとなになれるのは、平均すると1つの巣から1匹ほどとされます。
北マケドニアのプレスパ湖にうかぶ島では、ヘルマンリクガメのオスがメスよりはるかに多くなっています。オスにしつこく追い回されたメスは、やせて卵を産む回数がへり、島の高台の切り立った崖から落ちて死ぬ危険にもさらされています(2026年の研究)。長年の調査から、この島では2083年に最後のメスが死ぬと予測されています。
ナゾロジーでくわしくリクガメのオスはメスを「崖から突き落とす」ことがあると判明――『楽園』が地獄に変わるとき
名前の由来と人とのかかわり
漢字の「亀」は、カメの体を横から見た形をえがいた象形文字です。学名の Testudines は、ラテン語でカメ(リクガメ)を意味する testudo からきています。「ゼニガメ」は、もともとニホンイシガメの子どもの呼び名ですが、クサガメの子もゼニガメと呼ばれます。日本では、ゼニガメとして売られるクサガメの子や、ミドリガメとして売られるアカミミガメの子が、ペットとして特に多く出回ってきました。
英語では、イギリスなどで、ウミガメを turtle(タートル)、リクガメを tortoise(トータス)、淡水のカメを terrapin(テラピン)と呼び分けることがあります。一方、アメリカでは、カメ全体を turtle と呼ぶことが多く、国によって使い方がちがいます。
カメは、昔から人の文化と深くかかわってきました。日本では「鶴は千年、亀は万年」といわれ、長生きの象徴とされます。昔話の「浦島太郎」では、太郎が助けたカメに乗って竜宮城へ行きます。古代中国の殷の時代の後期(3300〜3000年前)には、カメの甲羅や動物の骨に文字を刻み、火をあててできたひび割れで占いをしていました。この「甲骨文字」は、知られている中でいちばん古い漢字とされています。
1968年9月には、ソ連の宇宙船「ゾンド5号」に乗った2匹のリクガメが、月のまわりを回る旅をしました。月の近くまで行った、地球の最初の生き物です。
ナゾロジーでくわしく史上初めて月の周回に成功したのは人類ではなかった!
数をへらすカメと、外来種の問題
一方で、カメは人の活動によって数をへらしています。脊椎動物の「目」の中で、絶滅のおそれがある種の割合が高いのは、サルのなかま(霊長目)に次いでカメのなかまです。西暦1500年以降にいた360種のうち、51〜56%が絶滅のおそれがあるとされます。すみかの破壊、食用や薬用、ペット用のとりすぎ、光害、気候変動などが原因です。ウミガメでは、漁の網にかかって死んでしまう「混獲」も大きな問題です。タイマイの甲羅から作る鼈甲(べっこう)や、ウミガメの剥製などの国際的な商取引は、ワシントン条約で原則として禁止されています。
日本では、ペットとして輸入されたアカミミガメが野外に広がり、在来のカメや水草、魚などに影響をあたえていると考えられています。環境省は、全国で約110万世帯が約160万匹のアカミミガメを飼っていると推定しています(2019年)。そこで2023年6月1日から、アカミミガメは「条件付特定外来生物」に指定されました。家で飼い続けることはできますが、池や川などの野外に放したり逃がしたりすることや、許可なく売り買いすることは、法律で禁止されています。カミツキガメは、2005年から「特定外来生物」に指定されていて、許可のない輸入や飼育、販売、野外に放すことなどが禁止されています。
カメの写真12枚
+ あなたが撮ったカメの写真を送る準備中
よくある疑問
- カメは何類? 爬虫類? 両生類?
- カメは爬虫類です。「カメ目」というグループで、トカゲやヘビ、ワニと同じ爬虫類のなかまです。肺で空気を吸って呼吸し、体はうろこでおおわれ、ウミガメもふくめて、ふつう陸に卵を産みます。カエルなどの両生類の多くは、殻のない卵を水の中に産み、子どもはえらで呼吸する点がちがいます。
- カメの寿命は? 何年生きる?
- 種によって大きくちがいます。身近なアカミミガメは、飼育下で20〜30年ほど、40年生きるものもいます。ゾウガメのなかまでは150年をこえた記録があり、セントヘレナ島の「ジョナサン」は、2026年の時点で190歳をこえていると推定されています。アカウミガメでは、年齢がはっきり分かっている中で最も長生きの個体が日和佐うみがめ博物館カレッタで飼育されていて、2026年の時点で76歳です。
- カメはなぜ長生きなの?
- 年をとっても、体がおとろえにくいためと考えられています。2022年の研究では、調べた52種のカメの約75%で、年をとるにつれて死ぬ確率が上がる「老化」が、とてもゆっくりか、ほとんど見られませんでした。甲羅のように体を守るしくみや、DNAの修復にかかわる遺伝子のちがいも、長生きと関係している可能性があります。
- カメはどこで呼吸する? 水の中に何分もぐれる?
- カメは肺で呼吸するので、水の中でくらすカメも、ときどき水面に出て息つぎをします。もぐっていられる時間は種によって1分から1時間ほどとさまざまで、眠っているウミガメは4〜7時間ほどもぐったままでいられます。一部のカメは、お尻にある総排泄腔からも、水にとけた酸素を取りこめます。
- カメは冬眠するの?
- 日本の川や池にすむニホンイシガメ、クサガメ、アカミミガメは、冬になると冬眠します。ニホンイシガメは、水の中の穴や石の下、積もった落ち葉の中などで冬をこします。冬眠中のカメには、空気を吸わずに、総排泄腔で水から酸素を取りこんですごすものもいます。
- カメはなぜ動きが遅いの?
- 陸の上では、重い甲羅を背負っていることに加えて、足がトカゲのように曲がってついていて、歩くのにあまり向いていないためです。アメリカの砂漠にすむサバクゴファーガメは、時速0.22〜0.48kmほどで歩きます。ただし水の中は別で、ウミガメは時速30kmほどで泳ぐことができます。
- アカミミガメ(ミドリガメ)を池や川に逃がしてもいいの?
- いけません。アカミミガメは2023年6月1日から「条件付特定外来生物」に指定され、野外に放したり逃がしたりすることは法律で禁止されています。違反すると罰則・罰金の対象になります。環境省は、寿命を迎えるまで飼い続けること、どうしても飼えなくなったら、責任をもって飼える人にゆずることをよびかけています。飼育下のアカミミガメは20〜30年ほど生き、甲羅だけで20〜30cmほどの大きさになります。
- 英語の turtle と tortoise のちがいは?
- イギリスなどでは、turtle はウミガメ、tortoise はリクガメを指すことが多く、淡水のカメは terrapin と呼ばれることもあります。一方、アメリカではカメ全体を turtle と呼ぶことが多く、国によって使い方がちがいます。リクガメのことは、英語で tortoise といいます。
ナゾロジーで読む39本
0 / 39
- 01 オサガメが「1時間に8リットルの涙」を流さなければならない理由
- 02 リクガメのオスはメスを「崖から突き落とす」ことがあると判明――『楽園』が地獄に変わるとき
- 03 8000万年前の「ウミガメの大移動」をイタリアで発見
- 04 古代植物だと思った化石が実は「カメ」だった!研究者「ナエトルと名付けよう」
- 05 なぜカメは長寿なのか? 極端に老化速度と死亡率が低いカメの謎
- 06 「爬虫類は何を考えているの?」カメの“気分”を測った世界初の実験
- 07 史上初めて月の周回に成功したのは人類ではなかった!
- 08 「1万6000匹のウシガエル」駆除作戦の結末は?在来カメが復活
- 09 ゾウガメが100歳にして「初めて母親」に!史上最長齢での産卵に成功
- 10 【世界初】ミシシッピアカミミガメが鳥を捕食する衝撃の瞬間が記録される!
- 11 「カメの涙」に集まる幻想的なアマゾンの蝶たち。その理由とは?
- 12 カメの甲羅には「人類の核の歴史」が記録されている!
- 13 カメは「お尻の穴」で呼吸できる!
- 14 ウミガメの卵を保護目的でビーチの別の場所に移動させると、脳の発育に問題が生じてしまう
- 15 70歳の父親と21歳の母親から赤ちゃんが誕生! 絶滅危惧「ガラパゴスゾウガメ」の新たな希望
- 16 ウミガメが「トンガ大噴火」を事前に予知していた?!
- 17 史上最高齢!190才のゾウガメ「ジョナサン」は高齢なのに未だ交尾するほど元気
- 18 100年前の古新聞に包まれた「古代亀の化石」を発見!
- 19 珍しい「双頭ガメ」の赤ちゃんが誕生!健康に成長中
- 20 実は肉食?ゾウガメがヒナを捕食する衝撃のシーンが報告される
- 21 ウミガメは「旋回遊泳」で地磁気から位置情報を得ていた? 海の生き物がなぜ円を描いて泳ぐのか解明
- 22 孤独なカメの赤ちゃんも「顔の模様に惹かれる」と判明。子どもが親の顔を見て微笑む理由が覆る!
- 23 見た目がイカつい「新種のカメ」が南米で発見される
- 24 カメは爬虫類よりも「鳥」に近い生物だった
- 25 絶滅したはずのゾウガメが30頭発見される
- 26 アルビノのカメが「白くない」理由とは?
- 27 115年連れ添ったカメ夫婦が離婚の危機
- 28 「ウサギとカメ」の童話は本当だった。 実は生涯でみるとカメのほうが足が速いという研究結果
- 29 緑モヒカンで有名。「パンクな亀」が絶滅の危機に
- 30 地球上のすべての電気を同時につけたらどうなる?
- 31 カメを丸呑みしようとするフクロウを発見!果たして、成功したのか?
- 32 【歩く・転がる・泳ぐ】動物界全体の知恵を「変形しながら駆使するロボット」が登場
- 33 小さな砂の孤島に60人が遭難!15年後に生存者が発見された【トロムラン島の謎】
- 34 鎧竜アンキロサウルス類は「アメ車に高速で衝突」されても平気なくらい頑丈だった
- 35 生物が最初に声を発したのはいつ? 動物の「鳴き声の起源」が4億年前に遡ると判明
- 36 東京の「池の水全部抜いてみた!」in 石神井公園かいぼり
- 37 ワニと人の涙は、ほぼ同じ成分だった!?ワニは2時間もまばたきしなくて大丈夫
- 38 日本ではありえない巨大すぎる世界の動物10選
- 39 どんな体勢からも”ひとりで起き上がる”不思議な物体「Gömböc(ゴムボック)」
近いなかまの図鑑
同じ爬虫類
参考文献
- Hirasawa T ほか (2013) The endoskeletal origin of the turtle carapace. Nature Communications
- Wang Z ほか (2013) The draft genomes of soft-shell turtle and green sea turtle yield insights into the development and evolution of the turtle-specific body plan. Nature Genetics
- Lyson TR ほか (2016) Fossorial Origin of the Turtle Shell. Current Biology
- Zora A, Gerlach J (2021) Giant tortoises hunt and consume birds. Current Biology
- Glorioso BM ほか (2025) Video Evidence of a Red-eared Slider (Trachemys scripta elegans) Preying Upon a Live Mallard (Anas platyrhynchos) Duckling in Louisiana. Southeastern Naturalist
- Jorgewich-Cohen G ほか (2022) Common evolutionary origin of acoustic communication in choanate vertebrates. Nature Communications
- Hoehfurtner T ほか (2025) Evidence of mood states in reptiles. Animal Cognition
- da Silva R ほか (2022) Slow and negligible senescence among testudines challenges evolutionary theories of senescence. Science
- Reinke BA ほか (2022) Diverse aging rates in ectothermic tetrapods provide insights for the evolution of aging and longevity. Science
- Arsovski D ほか (2026) Sex Ratio Bias Triggers Demographic Suicide in a Dense Tortoise Population. Ecology Letters
- 環境省「条件付特定外来生物アカミミガメ・アメリカザリガニの規制について」
- 環境省「アカミミガメ」(日本の外来種対策)
- Wikipedia「カメ」(日本語版)
- Wikipedia「ウミガメ」(日本語版)
- Wikipedia「アカウミガメ」(日本語版)
- Wikipedia「ニホンイシガメ」(日本語版)
- Wikipedia「クサガメ」(日本語版)
- Wikipedia「スッポン」(日本語版)
- Wikipedia「アカミミガメ」(日本語版)
- Wikipedia「カミツキガメ」(日本語版)
- Wikipedia「両生類」(日本語版)
- Wikipedia「Turtle」(英語版)
- Wikipedia「Sea turtle」(英語版)
- Wikipedia「Tortoise」(英語版)
- Wikipedia「Leatherback sea turtle」(英語版)
- Wikipedia「Jonathan (tortoise)」(英語版)
- Wikidata「カメ Testudines」(Q223044)
ありがとうございます。編集部で確かめます。
表紙の写真: Brocken Inaglory(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












