なぜ「運動すると時間が長く感じる」のかを調べた研究
私たちの主観的な時間感覚は、実際の時計の時間と必ずしも一致しません。
退屈な待ち時間が異様に長く感じられたり、集中していると時間があっという間に過ぎたりするのは、その典型例です。
これまでの研究では、ランニングや自転車などの身体運動中にも、刺激の持続時間を実際より長く見積もる傾向があることが報告されてきました。
しかし、その原因については長年議論が続いていました。
一つは、生理的な説明です。
運動によって心拍数が上がり、体温が変化し、ホルモンが分泌されることで、脳内の「内部時計」が変調を受けるという考え方です。
もう一つは、認知的な説明です。
運動中は身体を制御するために注意や認知資源が使われ、時間の処理に回せる資源が変化することで、主観的な時間が歪むのではないか、という仮説です。
今回の研究の目的は、この二つの可能性を実験的に切り分けることでした。
研究チームは22人の参加者に対し、まず「2秒間表示される青い四角形」を見せ、その長さを記憶してもらいました。
その後、1秒から4秒のさまざまな長さの刺激を提示し、「基準と同じ長さか、違うか」を判断してもらいます。
この時間判断課題を、次の4つの条件で行いました。
1つ目は、何もせずに立ったまま行うベースライン条件です。
2つ目は、トレッドミル上で走りながら行う条件です。
3つ目は、身体的な負荷は比較的小さいものの、バランスを取るのが難しい「後ろ歩き」をしながら行う条件です。
4つ目は、運動はせずに立ったまま、時間の長さを判断する課題に加えて、模様を覚えて答える視覚記憶課題を同時に行う「二重課題条件」です。
こうした実験の結果、走行・後ろ歩き・二重課題のすべてで、刺激の時間は実際より長く感じられており、およそ7〜9%ほど長めに見積もられていました。
一方、立ったままのベースラインでは、このズレはほとんど見られませんでした。
では、この結果は何を意味するのでしょうか。


























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