運動好きなマウスの血液が動かないマウスの脳機能をブーストする
近年の研究により、運動が脳機能の改善に効果があることが判明しています。
運動を行っている動物の脳内では、記憶をつかさどる海馬で新たなニューロンが生成され、記憶力や認知力の改善につながっていたのです。
しかし、なぜ運動が脳機能を改善するのか、その詳しいメカニズムは不明のままでした。
そこで今回、スタンフォード大学の研究者たちは「血液」に着目しました。
そして運動の結果生成した何らかの物質が血液を流れるならば、輸血によって運動の効果も移植できる可能性があると考えました。
さっそく研究者たちは同じ家系のマウスを用意し、一方のケージにはちゃんと回る回し車を配置、そしてもう一方のグループにはロックされて動かない回し車を入れて、飼育をはじめました。
マウスは非常に運動好きな動物であり、回し車があると1晩に10km近く回すことが知られています(マウスは夜行性)。
今回の研究でも、ちゃんと回る回し車が設置されている場合、マウスはすぐに使い方を覚えて、頻繁に運動するようになりました。
また運動しているマウスの脳を摘出して調べると、運動の効果は1カ月ほどで脳にあらわれはじめ、脳内のニューロンやその他の細胞の量を大幅に増やしていることが確認されました。
次に研究者たちは、運動を行っているマウスから3日ごとに総血液量の7%~8%(人間に換算すると250ml~365ml)を抜き取り、運動をしていないマウスに輸血してみました。
すると輸血を受けた動かないマウスでは、学習能力と記憶力が向上し、迷路を解くのも上手になるなど、認知機能の大きな上昇が確認されました。
また輸血を受けたマウスの脳を摘出して調べると、運動していたマウスと同様に、記憶をつかさどる海馬において新たなニューロンが増加していることが判明します。
この結果は、運動の結果が血液に保存されており、輸血によって運動効果を移植できることを示します。
問題は、いったいどんな血中成分が、その効果をになっているかです。