防弾チョッキを圧倒する衝撃吸収材料!「宇宙船の装甲」にも役立つ?
新しい材料である「ナノファイバーマット」は、ケブラーのナノファイバーとカーボンナノチューブを組み合わせて作られました。
カーボンナノチューブは、「六角形に配置された炭素原子(グラフェン)」のシートを円筒状に丸めた構造をしています。
その強度は鋼鉄の約20倍であり、繊維方向の引っ張り強度はダイヤモンドを凌駕すると言われています。
近年、「次世代の素材」として注目を集めていました。
さて、研究チームは2つの素材を適切な割合で合成し、繊維間に水素結合を発生させることに成功。
これにより衝撃吸収性能が飛躍的に向上しました。
ザバマラン氏は、水素結合の効果を次のように説明しています。
「水素結合は動的な結合です。分離と結合を絶えず繰り返すことで、大量のエネルギーを放出できるのです」
材料に加わった衝撃を吸収・緩和するには、衝撃の運動エネルギーを他のエネルギーに変換したり逃がしたりしなければいけません。
繊維間にある水素結合が、その役目を果たしてくれているというのです。
そして超音速の微粒子を撃ち込むテストでは、エネルギー散逸性能(エネルギーを変換する性能)が100%向上したと報告されています。
非常に軽いナノファイバーマットは、従来のケブラーや重い鋼鉄の板よりも、高速物体の衝撃を緩和してくれるのです。
研究チームは、この新しい材料の性能の高さから、防弾チョッキだけでなく、「超軽量の装甲」として活用できると考えています。
将来的には、宇宙船の装甲として利用され、スペースデブリ(宇宙ゴミ)衝突時の衝撃を吸収してくれる可能性があるとのことです。