日本人を取り巻く塩分とり過ぎ問題
私たちは生きるために食事を必要としますが、現代では多くの場合食事は娯楽の1つになっています。
私たちはもはや栄養摂取とは無関係に、ただ味を楽しむためだけにさまざまな食品を摂取します。
そのため特定の栄養素が過多になり、健康を害してしまうことも多くなってきました。
WHO(世界保健機関)が掲げる食塩摂取の基準値は、1日当たり5.0g未満(2012年、WHOガイドライン)とされています。
ところが、日本人の1日当たりの食塩摂取量は、成人男性で10.9g、成人女性で9.3gという調査結果が示されており、日本のほとんどの人はWHOが示す基準値のおよそ2倍も塩分をとっているのです。
たしかに醤油もお味噌も塩分の高い食事です。日本には塩分濃度の高い美味しい食事が溢れています。
塩分が気になるけど毎週ラーメンを食べてしまうという人も多いでしょう。
けれど塩分のとり過ぎは、高血圧・慢性腎臓病をはじめとした生活習慣病の発症や重症化の原因となるため、これは日本の食環境を取り巻く大きな社会問題とも言えるのです。
WHOの基準はいささか厳しすぎるため、厚生労働省はもう少し緩和した基準を設けています。それでも生活習慣病予防の為には、現在より食塩摂取量を20%以上低減する必要があると示しています。
しかし、塩分を控えた食事は「味が薄く」、どうしても長続きさせることができません。
健康を害した後に、医師の指導で減塩食をとらざるを得ない状況となった場合、生活の質さえ低下した気分になっていくでしょう。
そこで待ち望まれるのが、塩を使うことなく、味を強化する新しい技術の登場です。
今回報告された、明治大学とキリンの共同開発による「塩味を増強する箸デバイス」は、そうした未来の食事をサポートするものなのです。