1世紀以上もつかめなかった正体
パレオスポンディルス(学名:Palaeospondylus gunni、「古代の背骨」の意)は、英スコットランドにあるデボン紀中期(約4億年前)の地層から産出する化石として知られています。
最初に報告されたのは1890年で、これまでに約2000点見つかっていますが、脊椎動物のどのグループに属するのかは不明でした。
見た目は全長5センチほどの魚型をしており、分類の鍵となる頭骨(形態的特徴が集まっている)の長さは5~6ミリしかありません。
さらに、彼らには歯や頭部表面を覆う皮骨がなく、胸ビレや腹ビレの痕跡も見られません。(ヌタウナギやヤツメウナギなど、アゴを持たないグループの円口類に近い特徴)
その一方で、名前の通り、背骨がよく発達しています。(アゴを持つ脊椎動物の中の後から進化したグループに近い特徴)
この「キメラ的」特徴ゆえに、パレオスポンディルスをどの系統に位置付ければいいのか、これまで見当がつかなかったのです。
また、パレオスポンディルスの化石は、見つかった時点で骨格が破損しているケースがほとんどで、正確な観察が困難でした。
そこで研究チームは、約2000点の化石の中から、頭骨が完全に岩石中に保存されたものを探し、それに該当する化石を2点見つけることに成功。
この希少な化石をシンクロトロン放射光X線マイクロCT(SRXμCT)を用いて、高分解能・高コントラストの断層像を撮影しました。