人体の耐えうる「湿球温度」は定説より低かった!
本研究では、18歳から24歳の健康な被験者24名に協力してもらいました。
高温多湿の環境で死亡リスクが高いのは高齢者ですが、今回はまず、暑さに強い若者を対象とすることで、人体が耐えられる最大の湿球温度を調べることを目的としています。
実験に先立ち、被験者には、カプセルに封入された小型の無線遠隔測定装置を飲み込んでもらい、実験中の体幹温度を測定しました。
その後、被験者は、温度と湿度を自由に調整できる特殊な実験室に入り、トレッドミルやサイクリングマシンで軽い運動を行います。
そして、実験室の温度と湿度を徐々に変えて、被験者の体が体温を調節できなくなるポイントまで上昇させました。
その結果、人体が耐えられる湿球温度の上限は、湿度100%で30〜31℃と判明し、これまでの35℃より低いことがわかったのです。
研究主任のラリー・ケニー(Larry Kenney)は、次のように話します。
「この結果は、世界の湿度の高い地域では、湿球温度31℃を超えると、若くて健康な人でも、熱中症に注意すべきであることを示します。
また、今後の研究課題ではありますが、暑さに弱い高齢者では、この数値がもっと低くなると予想されます。
熱波の統計を見ると、熱波で死亡する人のほとんどは高齢者です。
気候が変化しているため、今後より多くの、そしてより深刻な熱波が発生するでしょう。
また、人口も増加の一途をたどっており、高齢者の数が増えています。
ですから、人体が耐えうる湿球温度を知ることは、高齢層の命を守るためにも、非常に重要なのです」
一方で、研究チームは、この結果について、「湿度の高い気候においてのみ意味があるもの」と注意を促します。
乾燥した場所では、発汗により体温調節ができるので、人体が耐えうる温度もまた変わってくるでしょう。
日本の気候は高温多湿のため、日本に暮らす私たちはこの情報に特に注意する必要があるかもしれません。