精子は協力した方が速く泳げる
東北大学の竹歳氏らは精子間の流体相互作用に関する運動モデルを作成し、精子が集団化することで遊泳速度および効率が高まることを明らかにしました。
精子が泳ぐことによって作られる液体の流れが、他の精子の運動を後押ししてくれることで、精子たちはより速く効率的に卵子のもとに向かうことができるのです。
しかしこれはあくまで流体力学的に考えられた予測モデルに過ぎません。
実際に精子が互いに協力しあうことはあるのでしょうか?
精子がペアになって泳ぐオポッサム
シェフィールド大学のムーア氏らはオポッサムの精子が2体でペアになって泳いでいく様子を観察しています。
頭をくっつけた2体の精子たちはそれぞれの尾を2本の足のようにして泳ぐことで、1体で泳ぐより速く泳げるそうです。
また、2体ペアで動く精子たちの頭の動きは1体で動く精子よりも変位幅が小さく、少ない動きで効率的に泳ぎ進むことができることがわかっています。
マウスの精子では協力だけでなく競争も
ハーバード大学の進化遺伝学者ハイディ・フィッシャー氏はマウスの精子を観察し、精子同士が協力する様子を詳細に報告しています。
マウスの精子は頭の部分がフックのような形状になっており、それによって精子が一列に繋がって速く泳ぐことができるのだそうです。
また、複数のオスと交尾する乱交型マウスの精子を観察したところ、同じオスの精子同士が協力し、別のオスの精子のチームとは協力せずに進むことが明らかになりました。
これはオス同士の近親で遺伝子情報が近い場合でも見られる行動で、精子が綿密に自分以外の遺伝子情報を区別できることを示しています。
このように複数の生き物の精子の観察において精子の「協力」を見ることができ、精子が単なる細胞ではなく、組織的に協力し、競争することが報告されています。
しかし、これらの精子の観察はあくまで実験用の水溶液の中で行われたもので実際の女性器内とは条件が異なります。
そこで、女性器内の流れや粘性を模倣した場所での観察が行われました。