喘息薬「ロフルミラスト」には記憶回復効果があった
研究者たちが目をつけたのはロフルミラストとよばれる喘息や慢性閉塞性肺疾患の治療薬でした。
これまでの研究で、睡眠不足の脳では脳細胞のシグナル伝達分子(cAMPなど)が低下していることが知られていました。
そしてロフルミラストにはそれらのシグナル伝達分子の量を回復する効果があることがわかっているのです。
そこで研究者たちは、学習後に睡眠不足にさせられたマウスたちが2回目のテストを受ける直前に、腹腔にロフルミラストを注射してみることにしました。
すると驚いたことに、光を使って脳細胞を活性化させたときと同じようにマウスたちの記憶が回復し、新たな追加オブジェを認識できるようになることが判明します。
この結果は薬物を用いることでアクセス困難になった「忘れられた」記憶を回復できることを示します。
研究者たちは「薬物で特定の記憶を繰り返し回復させることは試験勉強にも役立つだろう」と述べています。
また今回発見された作用は、単に試験勉強に役立つだけでなく、老化で過去の出来事が思い出せなくなっている人にも効果を発揮する可能性があります。
研究者たちは「ロフルミラストを使用することで老化やアルツハイマー病にともなう健忘症を回復させる可能性がある」と述べ、さらに応用が進めば「特定の思い出を再活性化して、いつでも鮮明な記憶の追体験ができる可能性もある」と語ります。
アクセスしづらくなった記憶を思い出す今回の作用は、学習における復習と似た効果を生み、情報を脳内でより強固に定着させられる可能性があるといいます。
もしかしたら未来の世界では人生の嬉しい瞬間を繰り返し追体験するための「思い出し屋」や、復習と同じ効果を発揮する「学習補助薬」が存在するかもしれませんね。
(注意:今回の研究では喘息薬が使用されていますが、個人の判断で喘息薬を体に注射する行為は非常に危険なのでやめましょう)