レーザー給電によって「飛び続けるドローン」が中国で開発される
レーザー給電によって「飛び続けるドローン」が中国で開発される / Credit:Li Xuelong(NPU)_Laser-charged Chinese drone can stay in the air indefinitely(2023 New Atlas)
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レーザー給電により「いつまでも空中に留まれる」ドローン

2023.01.16 Monday

撮影、測量、災害調査、点検、警備など、ドローンはさまざまな分野で活躍できる可能性を秘めています。

ところが、「飛行時間が極めて短い」という最大の弱点がドローンの活躍を阻んでいます。

2022年12月、中国・西北工業大学(NPU)に所属するコンピュータ科学者リー・シュイロン氏ら研究チームは、いつまでも空中に留まれるドローンの開発に成功したと報告。中国の日刊紙「中国日報」で実験の様子が公開されました。

ソーラーパネルが太陽からエネルギーを受け取るにように、レーザー給電によって飛行するためのエネルギーを絶えず受け取ることができるというのです。

Laser-charged Chinese drone can stay in the air indefinitely https://newatlas.com/drones/laser-charged-chinese-drone/ Chinese scientists develop laser-powered drone to stay aloft ‘forever’ https://www.scmp.com/news/china/science/article/3205885/chinese-scientists-develop-laser-powered-drone-stay-aloft-forever?module=perpetual_scroll_0&pgtype=article&campaign=3205885

ドローンのレーザー給電に成功!着陸不要の「長時間のドローン作業」が現実に

ドローンの弱点は「飛行時間の短さ」にあります。

小型ドローンが空を飛ぶには、重くて大きなバッテリーを採用することができないからです。

従来のドローンには、着陸とバッテリー充電・交換が必須
従来のドローンには、着陸とバッテリー充電・交換が必須 / Credit:Canva

軽量化や効率化の研究が進んでいる現在でも、一般的なトイドローンの飛行時間は10分未満、高価な産業用ドローンの飛行時間が30分程度です。

人間と共同するためにフルタイムで8時間駆動させる場合、16回も作業を中断しなければいけないのです。

プロモーションビデオの撮影など、短時間の作業であれば問題ないですが、監視や調査、警備などの長時間の仕事に投入するのは難しいでしょう。

こうしたドローンの弱点を克服したのが、シュイロン氏ら研究チームです。

彼らが開発した新しいドローンは、底面に「光電変換機」が取り付けられています。

レーザーを電気に変える「光電変換機」を底面に装備
レーザーを電気に変える「光電変換機」を底面に装備 / Credit:Li Xuelong(NPU)_Laser-charged Chinese drone can stay in the air indefinitely(2023 New Atlas)

この部位にレーザーを照射することで、ワイヤレス給電を可能にしました。

これにより、バッテリー充電のために着陸する必要がなくなります。

研究チームは新技術の変換効率を明らかにしていませんが、一般的なレーザー給電の数値(20~30%)を考えると、従来の方法(モバイルバッテリーの変換効率は70~95%)と比べてかなりエネルギー効率が悪くなると考えられます。

それでもドローンを稼働させ続けられるメリットからすると、損失レベルは許容できる範囲でしょう。

また研究チームは、長距離の連続伝送を実現させるため、視覚追跡システムやレーザー出力を安全な範囲で自律的に調整するシステムも設計しました。

これにより、大気の密度変化や乱気流による悪影響を軽減し、安定したエネルギー伝送が可能になります。

テストの画像。室内と野外でレーザー給電を頼りに飛び続けることに成功
テストの画像。室内と野外でレーザー給電を頼りに飛び続けることに成功 / Credit:Li Xuelong(NPU)_Laser-charged Chinese drone can stay in the air indefinitely(2023 New Atlas)

そして屋内・屋外の両方で実施されたテストでは、新しいドローンを高度10mで飛行させ続けることに成功しました。

レーザーが届く範囲では「いつまでも空中に留まる」ことができるのです。

研究チームは今回の開発に基づいて、新しいドローンシステムの略図も公開しています。

あらゆる場所に設置されたレーザー給電デバイスにより、ドローンが「飛び回る」世界の略図
あらゆる場所に設置されたレーザー給電デバイスにより、ドローンが「飛び回る」世界の略図 / Credit:Li Xuelong(NPU)_Laser-charged Chinese drone can stay in the air indefinitely(2023 New Atlas)

街中や船上などにレーザー照射デバイスを設置することで、「広範囲でドローンが活動し続ける」というのです。

これが実現するなら、災害救援、配送、警備など、さまざまな仕事にドローンを投入できるでしょう。

また「都市を複数のドローンで監視・防衛する」「戦車を拠点にして、その周囲を軍事ドローンが飛び回る」などの軍事利用も可能だと考えられます。

そして現在、「飛行し続けるワイヤレス給電ドローン」を開発しているのは、アメリカのPowerLight社など、中国だけではありません。

ドローンの長時間活動が可能になれば、SF作品に描かれるような常にドローンが街中を飛び回る光景も当たり前になって行くかもしれません。

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