カード選択に働く「2つの心理作用」とは?
ゴールドスミス・カレッジと中国・清華大学が共同で行った本研究では、18歳から25歳の60名(男性36名、女性24名)に被験者として協力してもらっています。
実験では、テーブルに伏せた状態で横一列に並べた4枚のトランプカードから1枚を選ぶよう指示しました。
もしカードの選択に何の法則もなくランダムに引かれるなら、それぞれのカードが選ばれる確率は4分の1(25%)になります。
ところが実験の結果、3分の2(66%)の被験者が左から3番目のカードを選ぶ傾向にあったのです。
ただし、この傾向は「右利き」の人に限られていました。
左利きあるいは左手を使った被験者は、左から2番目のカードを引く傾向が高かったようです。
ゴールドスミス・カレッジの心理学者で研究主任のグスタフ・クーン(Gustav Kuhn)氏は、この結果に受けて「多くの人は利き手に近い場所を選びやすいこと、それから端っこを避ける心理があることを示唆している」と指摘します。
まず一つ目の心理についてクーン氏は「これまでの研究で、人々が何らかの物や商品を選ぶとき、手に取りやすい場所から選択しやすいことが分かっている」と説明します。
そのため、利き手から一番遠いカード(右利きなら左端、左利きなら右端)はわざわざ選ぼうとしないのです。
よって人々は利き手により近い側から選びますが、ここで2つ目の心理が働きます。
この「端っこを避ける」心理に関しても過去の実験で検証されているとクーン氏は話します。
たとえば、スーパーマーケットの棚に並んだ食料品は列の中央に近い場所から先に選ばれ、端っこは後に残りやすい傾向にあるのです。
これは野菜や牛乳パックを手に取るときなど、ほとんどの人に身に覚えがあるのではないでしょうか?
また、この心理は物理的な条件だけでなく、心理的な条件でも働くという。
たとえば、日頃の幸福度を0〜10点満点で評価するよう求められると、どんなに不幸だと感じている人でも0点は選択せず、どんなに幸福でも10点と答える人はほぼいないことが分かっています。
それゆえ、4枚のカードから一枚を選択するときは、利き手に近く、かつ端っこでない場所が選ばれやすいのです。
クーン氏はこれについて、左から3番目のカードを選ぶ人が多いのは、どうしてもその一枚を選びたいという意思ではなく、「単にそこが最も”抵抗感の薄い道(path of least resistance)”だから」だと述べています。
この心理テクニックはおそらく、日常のカードゲームの中でも使えるでしょう。
ただし、引かせたいカードを相手に選ばせるカードマジックでは、選び手も色々と身構えてしまうので、あまり使えないと思います。
しかし、談笑しながらのババ抜きくらいなら十分に効果を発揮するはずです。
百発百中というわけにはいかないでしょうが、この心理トリックを理解していれば、かなりの確率でババを引かせられるかもしれません。
実際に家族や友人に試してみてはどうでしょうか?