空気中の水分吸収を可能にする遺伝子を特定
コクヌストモドキなどの甲虫類は直腸を開いて、湿った空気から水分を直接吸収し、体液に変換することができます。
また食物からも効率よく水分を吸収できます。
その証拠に甲虫類が排泄した糞には水分がほとんど残っていません。
水分含量1~2%の乾燥した穀物でさえ、甲虫類の体を潤すのに役立つと言われています。
研究チームが、このメカニズムを解明するため、コクヌストモドキの内臓を調査したところ、彼らはコクヌストモドキの直腸で他の部位に比べて60倍も多く発現している遺伝子「Nha1」を特定しました。
そしてこれらが「レプトフラグマタ細胞(Leptophragmata cells)」と呼ばれる独特の細胞群に局在していると判明。
レプトフラグマタ細胞は、甲虫の肝臓と循環器系(昆虫の血液)の「窓」のような存在であり、直腸から水分を効率よく吸収して体内に送っていました。
今回の調査で、遺伝子「Nha1」がコクヌストモドキの効率的な水分吸収の鍵だと分かりました。
実際チームが遺伝子「Nha1」の発現を抑制すると、コクヌストモドキの排泄水分量は劇的に増加し、乾燥した環境での生存率も低下しました。
このコクヌストモドキに関する発見は、他の甲虫類にも通じると考えられます。
つまり、「Nha1」の発現を抑制する方法を発展させれば、世界中で作物を荒らす甲虫類たちを一斉に駆除する「環境に優しい殺虫剤」の開発に繋がる可能性があるのです。
「お尻で空気中の水分を吸収する甲虫類」の「お尻」を使えなくすることで、世界中の食糧問題が大きく改善されるかもしれません。
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