定期的な小休憩は逆効果だった?
本研究では、23歳から29歳までの健康な男性18名に参加してもらい、7時間にわたって9つの認知タスク(オフィスライクなパソコン作業)をこなすことを求めました。
また作業中には50分ごとに10分間の小休憩を設けています。
この定期的な小休憩が参加者の認知機能、意欲、気分、集中力、中枢神経系におよぼす影響を評価するため、認知タスクのスコア評価、脳スキャン、血液検査を行いました。
これまでの定説通りであれば、小休憩ごとに疲労や集中力が回復し、タスクパフォーマンスが向上すると予想されます。
ところが調査の結果、広く知られている説に反し、定期的な小休憩は参加者の精神的疲労を誘発し、集中力、注意力、学習能力、視覚認識などの認知機能に悪影響を与えていることが判明したのです。
研究主任のマリウス・ブラザイティス(Marius Brazaitis)氏は「高いレベルの精神的努力を必要とする認知タスクのスコアは、7時間の間に徐々に悪化していました」と話します。
さらに精神的疲労や認知機能の低下の作用は、調査終了後に4時間半の休息を取った後でも完全には回復していませんでした。
「この結果は、勤務中に短い休憩を取り入れることが、疲労の予防や認知機能の改善には繋がらないことを示唆している」とブラザイティス氏は指摘します。
本研究には参加していない英キール大学(Keele University)のコリン・リグビー(Colin Rigby)氏は、この結果について次のような解釈を寄せました。
「定期的な小休憩を挟み込むために1日のノルマを分解することは、それ自体が仕事に関連する認知タスクとなり、結果として心理的なプレッシャーを増幅させると考えられます」
たとえば、あらかじめ何分ごとに1回の小休憩を入れると決めていると、リグビー氏いわく「タスクの進行具合ではなく、時計に従って仕事をすることになる」という。
そうすると、せっかく持続していた集中力が中断され、「休憩から戻ったときに、どこまで進めていたか、また休憩前にどんな思考プロセスを辿っていたかを思い出す必要がある」ため、返って認知タスクに負担がかかったり、仕事に余計な時間を費やしてしまうといいます。
その結果として、無駄な心労が増えたり集中力や注意力が落ちて、作業効率が悪くなるのです。
お昼休みの時間は決まっている会社も多いでしょうが、休憩時間を意識して作業するより、自身で一区切り付いたと休憩のタイミングを選ぶ方が、心理的には楽であり作業効率も高まる可能性があるかもしれません。
小まめに時間を決めて休憩は取らない方が良い、というのが今回の研究の結果でしたが、休憩自体は誰にでも必要となるものです。
では、どんな休憩の取り方が効果的に脳を休め集中力を回復させるのに有効なのでしょうか?