私たちは「音」とどう関わっているのか?
私たちにとって「音」は、振幅や周波数といった物理的な側面を超えた「意味」を持っています。
人の声にしても環境音にしても、それが心地いいか不快であるか、安心できるか警戒すべきかなど、多様な受け取り方をしているからです。
たとえば、笑い声や明るい音楽を聞くと嬉しくなり、泣き声や暗い曲を聞くと悲しくなることが多いでしょう。
つまり、あらゆる音は私たちに、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラル(中立)といった「感情的価値(emotional value)」を誘発します。
そしてこの音の生み出す感情的価値は、音の種類だけでなく、聞こえてくる方向によっても変化することがわかってきています。
EPFLの研究チームは以前の調査で、人は後方から聞こえてくる音により敏感に反応しやすいことを発見していました。
実験では、後方から近づいてくる音を聞かせると、前方や左右から同じ音を聞かせたときよりも、警戒心や不快感、興奮度が大きくなったのです。
「これには進化上のメリットがある」と研究者は指摘します。
たとえば、先史時代の人類は、無防備な背後から近づいてくる獣にいち早く気づく必要があったはずです。
現代の我々でもカツカツと響く靴音などは、前方から聞こえて来たときより、後方から聞こえて来たときの方が強く不安を感じるでしょう。
このように、音が聞こえてくる「方向」によっても私たちの感情は異なる反応を示します。
そして同チームは今回、この「音の感情的価値」と「それが聞こえてくる方向」の関係性について新たな発見をしました。
それが、ポジティブな感情を誘発する発生音は、左耳から入ったときに脳を最も強く活性化させるという事実です。
この決kは、どのような実験から導かれたのか、次に見ていきましょう。