デジタルブリッジの電源をオフにしても歩行できるように!
なんと6カ月間のトレーニングの結果、オスカム氏は「デジタルブリッジ」の電源をオフにしても、松葉杖や歩行器があれば自力で歩けるようになったのです。
これについて、研究チームのギョーム・シャルベ(Guillaume Charvet)氏は「これは新しい神経接続が発達したことを示唆している」と指摘します。
「脳と脊髄の間を行き交う神経信号のリンクが確立されたことで、脊髄の損傷部位の神経細胞ネットワークの再編成が促進されたのでしょう。
それによって事故で失った感覚や運動能力に回復が見られたのです」
ただし、この回復の仕組みについては不明な点が多いと話します。
「問題は脳のどこが脊髄のどこと繋がったのかということですが、それはまだ分かっていません。
この2つがどのように連携しているのかを解明する必要があります」
一方でオスカム氏は、自らの意思で再び歩けるようになったことについて、こう話しています。
「2つのインプラントを移植するために、2度の侵襲的な手術を受けなければならず、ここにたどり着くまでの道のりは長いものでした。
しかし今、私は自分のしたいことをすることができます。一歩を踏み出そうと思えば、すぐに脚に刺激が入るのです。
友人とバーでビールを飲みながら立ち話もできるようになりました。
このシンプルな喜びは、私の人生における大きな変化となっています」
では、この技術が世界中の麻痺患者のもとに届くのはいつ頃になるのでしょうか?
シャルべ氏は「一般に広く提供できるまでには、さらに数年の研究や改善が必要です」と話しています。
デジタルブリッジを試したのはオスカム氏ただ一人であり、他の麻痺患者にも同様の効果が得られるとは断言できません。
また脊髄の損傷が重度の場合は、脳と脊髄のコミュニケーションを取り戻すことも難しくなるといいます。
それでも「デジタルブリッジは多くの麻痺患者において歩行を取り戻しうる技術になると感心している」とシャルべ氏は述べています。
チームは現在、デジタルブリッジを手や腕の麻痺患者にも応用できるかどうかを試験する準備を進めているとのことです。