リンコサウルスの歯は年を取るごとにすり減っていた
リンコサウルスは、まだ恐竜が出現する前の約2億5000万年前に誕生し、最初の恐竜が現れ始めた約2億2500万年前まで存在しました。
羊サイズの草食動物であり、堅く丈夫な植物をエサとしながら、今日のヨーロッパやアフリカ、南北アメリカ大陸、インド、マダガスカルまで広く勢力を拡大していたようです。
研究主任のマイク・ベントン(Mike Benton)氏は、彼らがいかに繁栄していたかについてこう話しています。
「私は数年前にリンコサウルスを発掘し始めたばかりですが、多くの場所では1つ化石が見つかると、立て続けに数百個もの化石が見つかることが分かりました。
それぐらい、彼らはそれぞれの生態系で支配的だったのです」
そしてベントン氏らは今回、イングランド南西部デヴォン州で発掘されてきた化石をCTスキャンし、リンコサウルスの歯や顎の骨が生涯に渡りどのように変化したかを調べました。
同チームのロブ・コラム(Rob Coram)氏によると、リンコサウルスの歯や顎の化石は充実しており、幼い個体から成熟した大人、さらには老いた個体まで、ほぼ全ての年齢の化石を取り揃えることができたといいます。
そこで個々の化石を年齢順に並べ、生涯を通じての経年劣化を調べました。
その結果、リンコサウルスは大きく成長するにつれて、口内の奥歯の方に向かって新しい歯が増えることが確認されています。
ところが、若い頃は、歯や顎がすり減って摩耗した部分が口内の前列にのみ留まっていたのに対し、年をとるにつれて、摩耗した部分が奥歯の方まで広がっていったのです。
研究者は「リンコサウルスはシダ植物のような本当にタフな植物を食べていたので、歯や歯が繋がっている顎の骨まで摩耗していました」と指摘。
加えて「ある年齢を過ぎる頃には、新しい丈夫な歯も生えてこなくなるので、摩耗した歯で植物を食べ続けることで、摩耗はさらに悪化することになったでしょう」と続けます。
特に老いた個体では、歯が顎骨のラインまでほぼ完全にすり減っていて、今まで通り、堅い植物を食べることが難しくなっていたはずです。
チームは以上の結果を受けて、リンコサウルスは堅い植物食によって徐々に歯がすり減り、老齢に差しかかる頃にはろくに食事が取れなくなって飢餓状態に陥り、最終的に餓死にいたるサイクルをたどった可能性が高いと述べました。
研究者らは、このライフサイクルが「今日のゾウに似ている」と指摘します。
ゾウも野生下では堅い植物をエサにして徐々に歯をすり減らしていきますが、その度に新しい歯に生え変わります。
この生え変わりは6回という限度があり、最後の生え変わりが終わる60〜80歳になると、エサが食べれなくなって寿命を終えます。
リンコサウルスもこれと同じで、もしかしたら自分の歯の具合から「もうすぐお迎えが来そうだな」と悟っていたかもしれません。
なんとなく哀愁を感じますね。
ただし、このライフサイクルは個々のリンコサウルスの一生涯の話であって、種としての絶滅を招いた原因というわけではありません。
リンコサウルスの歯が弱って死に至る問題は、繁殖の適齢期を超えた後であるため、これが種の絶滅に直接影響することはないのです。
これまでの研究によると、リンコサウルスが絶滅したのは、大規模な気候変動により利用できる植生が変わったことが原因だったようです。
その後の地球の生態系は、より獰猛で何でもガツガツ食べる恐竜たちに引き継がれることになります。