小石を飲み込むペンギンはメスだけだった
では、ペンギンはどのような理由で石を飲み込んでいたのでしょうか。
飼育下のペンギンは、コンクリートで作られた床の上で過ごすのが一般的ですが、海響館のフンボルトペンギンを飼育しているエリアは、生息する環境に近い小石や土を混ぜた地面になっていて、たびたびペンギンが小石を飲みこむ姿が飼育員によって目撃されていました。
そこでこの度、下関市立しものせき水族館「海響館」では、胃の中にある石の役割を明らかにするため、飼育下のフンボルトペンギンが小石を飲む行動と吐き戻しする行動に注目し、小石を飲み込む時期や吐く時期やどの個体がその行動をしているかを調べました。
すると、小石を飲み込む行動を取っているのが、産卵期のメスのみで、その多くが卵殻形成時期に集中していることがわかったのです。
研究チームはペンギンの”小石を飲み込む行動”が「卵殻形成期のメスのみに見られる」(オスには見られない)ことから、この行動が産卵に関連しているのではないかと推測しました。
この調査結果から得られた研究チームの見解は次のようなものです。
「ペンギンの胃内から見つかる石は、メスが卵殻形成に必要なカルシウムを補給しようとして、誤って小石を飲み込んでいる可能性が考えられ、これまで考えられているような浮力調節や消化や絶食時の適応のためである可能性は低いのではないか」
サンゴなどはカルシウムを含むため、本来はこれを飲み込もうとしていて、それと間違えて小石をのんでいるのではないか? というのが今回の結果から示唆されたのです。
人間も出産前はカルシウムの吸収率が上昇すると言われており、子供を育てるためにカルシウムを摂取しようとすることは生き物として必然の行動であるようです。
日本でフンボルトペンギンに出会うことができる水族館は多いので、繁殖期から産卵期あたりには、もしかしたらメスのフンボルトペンギンが小石を吐き出す瞬間を見ることができるかもしれませんね。