友人に囲まれていても孤独を感じる
孤独を感じている人ほど、脳反応が人とは異なるという事実は、友達が少ないことに原因があるのでしょうか?
今回の研究では、被験者の友人の数などの社会的つながりについても調査していますが、脳の反応が特異的であるという結果は、友人の数や、ペアにした人同士が友人であるかどうかなどとは関係していませんでした。
論文では今回の結果が、「独特な脳反応を示す人は友人が少ない」とか、「脳反応が類似する人同士は互いに友人である可能性が高い」などという、短絡的なものではないことが強調されています。
本研究を行ったベク准教授らは、「友人がいるかどうかに関係なく、孤独感の強い人ほど特異的な神経反応を示しやすい」という結果を受け、「自分とは異なる世界認識をする人々に囲まれていることが、(たとえ彼らと定期的に交際していたとしても)孤独感を高める危険因子である可能性がある」と述べています。
本研究ではまた、孤独感のレベルが高いほど、脳の報酬系を構成する領域の感じ方も人とは異なることが示されています。
今回の結果は、孤独を感じている人々は仲間と同じ物を見ても、同じ価値を見出せない結果、自分が仲間と違っていると認識し、それが社会的なつながりを達成する上でさらなる困難をもたらすのではないかという事を指摘しています。
友達がたくさんいても、いつも映画や漫画などでみんなと感想が違うとなってくると、その人は実際孤立はしていなくても、孤独を感じるようになってしまうのでしょう。
そして健康にとってマイナスとなる孤独感は、こうした個人の孤独に対する感じ方に依存する可能性があります。
孤立した人をなくすための試みは社会のさまざまな場所で試みられていますが、実際社会的には孤立していなくても、本人が孤独を感じてしまうのではどうにもなりません。
今後の研究についてベク准教授は、「友人がいて社交的であるにもかかわらず孤独を感じている人々について調査することに興味がある」と述べています。
さらに、孤独な人々のユニークな神経処理が、どのような状況に置かれた場合に起こるのかを特定することにも意欲を示しています。