炭水化物や脂質の制限は長生きにつながるのだろうか?
炭水化物は、ごはん、麺などの雑穀類のほか、いも類や甘味料類に多く含まれる栄養素です。
栄養学の観点からは、糖質と食物繊維の総称として使用され、ダイエットなどの文脈で使われる場合は「糖質」を指すのが一般的です。
一方、脂質は、サラダオイルやゴマ油などの油脂類、そして肉類に豊富に含まれています。
炭水化物と脂質はどちらも、私たちのエネルギー源として重要な役割を果たします。そのため、これらを適切なバランスで摂取することが、健康維持に重要となるのです。
これまで、体重管理や生活習慣病の予防のためには、炭水化物と脂質の摂取制限(低炭水化物ダイエットと低脂肪ダイエット)が有効とされてきました。
しかし、近年の研究では、過度な炭水化物および脂質の摂取制限が生存リスクを増加させる可能性があることが示されています。
さらに、よく耳にする低炭水化物ダイエットや低脂肪ダイエットでは、「短期的な効果」と「長期的な生存予後(寿命)」との間に、大きな矛盾が存在することも明らかになっています。
また、これまでの多くの研究は西洋人を対象に行われており、その結果が日本人に直接適用できるわけではないという問題が指摘されてきました。日本人を含む東アジア人は、一日の炭水化物の摂取量が多く、脂肪の摂取量が少ないという傾向があるためです。
そこで、名古屋大学予防医学分野の研究チームは、一般的な食習慣をもつ日本人を対象に、炭水化物と脂質の摂取が寿命にどのような影響を与えるかを調査しました。
具体的には、日本全国の健康な男性34,893人と女性46,440人のデータを約9年間にわたって追跡し、その食事習慣と生存期間の関係を分析しました。
研究者らは、調査票の食事記録から、対象者の一日あたりの炭水化物と脂肪の摂取量を推定し、これを「エネルギー比率(%)」として算出して比較しました。
エネルギー比率とは、摂取エネルギーの中で各栄養素が占める割合を指します。例えば、一般的な唐揚げ1ピース(約60g、150kcal)の場合、エネルギー比率はタンパク質が約27%、脂肪が約60%、炭水化物が約13%となります。
なお、一般的にはタンパク質が10-20%、脂質が20-30%、炭水化物が50-60%が摂取の目安とされています。
それでは次の項から、どのような結果が得られたのかを確認していきましょう。